(1)トマト由来食物繊維の食後血糖値上昇抑制作用
【標題】
トマト由来食物繊維の経口摂取による食後血糖値上昇抑制作用に関するメタアナリシス(MA)を含むシステマティックレビュー(SR)(更新版)
【目的】
「疾病に罹患していない者を対象とし、トマト由来食物繊維を含む被験物の経口摂取が、トマト由来食物繊維を含まない被験物の経口摂取もしくは何も介入を行わない場合と比較して、食後血糖値の上昇抑制作用を示すか?」というリサーチクエスチョンを、MAを含むSRによって検証することを目的とした。
【背景】
これまでに実施したMAを含むSRにより、1.6 gのトマト由来食物繊維を食事の前に摂取することで、食後の糖の吸収と血糖値の上昇が抑制されることを示した。一方で近年、SRの報告にあたってのガイドラインであるPRISMA声明が従来の内容から更新されたことから、その内容を反映した記載内容にするため、既存のSRを更新した。
【レビュー対象とした研究の特性】
対象者は疾病に罹患していない健康な成人とし、トマト由来食物繊維を含む食品の摂取が、トマト由来食物繊維を含まないかトマト由来食物繊維の含量の少ない被験物の経口摂取、もしくは何も介入を行わない場合と比較して、食後の血糖値や血糖上昇曲線下面積(*1)に影響を与えるかを検証した研究を対象とした。2024年2月以前に発表された文献を国内外のデータベースで検索した結果、3つの研究が条件を満たしていたため、この3研究をレビューの対象とした。
【主な結果】
対象3研究では、一日当たり1.6~2.9 gのトマト由来食物繊維を含む食品を摂取することにより、食後の血糖値や血糖上昇曲線下面積の有意な低下が認められていた。また、3研究を統合したMAにおいて、血糖最大変化量や血糖上昇曲線下面積の有意な低下が認められた。このことから、1.6 gのトマト由来食物繊維を含む食品の摂取は、食後の糖の吸収を抑え血糖値の上昇を抑制する機能があると結論づけた。
【科学的根拠の質】
対象3研究のエビデンスの確実性は、「高」~「中」であり、トマト由来食物繊維の経口摂取による食後血糖値の上昇抑制作用には一定の科学的根拠があると考えられた。但し、採用研究が3研究と少ないことで、いくつかのバイアスが評価結果に影響している可能性も否定できないため、今後もトマト由来食物繊維についての情報収集を継続的に行っていく。
(2)トマト由来食物繊維の食後血中中性脂肪上昇抑制作用
【標題】
トマト由来食物繊維の経口摂取による食後血中中性脂肪上昇抑制作用に関するメタアナリシス(MA)を含むシステマティックレビュー(SR)(更新版)
【目的】
「疾病に罹患していない者を対象とし、トマト由来食物繊維を含む被験物の経口摂取が、トマト由来食物繊維を含まない被験物の経口摂取もしくは何も介入を行わない場合と比較して、食後血中中性脂肪の上昇抑制作用を示すか?」というリサーチクエスチョンを、MAを含むSRによって検証することを目的とした。
【背景】
これまでに実施したMAを含むSRにより、食後の血中中性脂肪値が高めの方(プラセボ飲料摂取時の血中中性脂肪最大値が200 mg/dL以上であった方)において、1.6 gのトマト由来食物繊維を食事と一緒に摂取することで、食後の脂肪の吸収と血中中性脂肪の上昇が抑制されることを示した。一方で近年、SRの報告にあたってのガイドラインであるPRISMA声明が従来の内容から更新されたことから、その内容を反映した記載内容にするため、既存のSRを更新した。
【レビュー対象とした研究の特性】
対象者は疾病に罹患していない健康な成人とし、トマト由来食物繊維を含む食品の摂取が、トマト由来食物繊維を含まないかトマト由来食物繊維の含量の少ない被験物の経口摂取、もしくは何も介入を行わない場合と比較して、食後の血中中性脂肪値や血中中性脂肪上昇曲線下面積(*1)に影響を与えるかを検証した研究を対象とした。2024年2月以前に発表された文献を国内外のデータベースで検索した結果、2つの研究が条件を満たしていたため、この2研究をレビューの対象とした。
【主な結果】
対象2研究では、一日当たり1.6~3.2 gのトマト由来食物繊維を含む食品を摂取することにより、食後の血中中性脂肪値が高めの健康な方(食後血中中性脂肪値の最大値が200 mg/dL以上の方)において、食後の血中中性脂肪値や血中中性脂肪上昇曲線下面積の有意な低下が認められていた。また、2研究の結果を統合したMAでも、血中中性脂肪最大変化量や血中中性脂肪上昇曲線下面積の有意な低下が認められた。このことから、1.6 gのトマト由来食物繊維を含む食品の摂取は、食後の血中中性脂肪値が高めの健康な方において、食後の脂肪の吸収を抑え血中中性脂肪の上昇を抑制する機能があると結論づけた。
【科学的根拠の質】
対象2研究のエビデンスの確実性は、「中」であり、トマト由来食物繊維の経口摂取による食後血中中性脂肪の上昇抑制作用には一定の科学的根拠があると考えられた。但し、採用研究が2研究と少ないことで、いくつかのバイアスが評価結果に影響している可能性も否定できないため、今後もトマト由来食物繊維についての情報収集を継続的に行っていく。
(3)GABAの血圧低下作用
【標題】
γ-アミノ酪酸 (GABA) の経口摂取による血圧低下作用に関するメタアナリシス(MA)を含むシステマティックレビュー(SR)(更新版)
【目的】
「疾病に罹患していない者を対象とし、GABAを含む被験物の経口摂取が、GABAを含まない被験物の経口摂取もしくは何も介入を行わない場合と比較して、収縮期血圧(SBP) および拡張期血圧 (DBP) の低下作用を示すか?」というリサーチクエスチョンを、MAを含むSRによって検証することを目的とした。
【背景】
これまでに実施したMA を含むSRにより、12.3 mg/日のGABAを12 週間摂取することで、血圧が高めの方(正常高値血圧者)や軽症者(I度高血圧者)に対し血圧低下作用を示すと考えられた。一方で、前回のSRの実施から既に7年以上が経過していることや、SRの報告にあたってのガイドラインであるPRISMA声明が従来の内容から更新されたことから、前回のSRを更新した。
【レビュー対象とした研究の特性】
対象者は疾病に罹患していない健康な成人とした。血圧に関しては、血圧が正常の方(正常血圧者)、正常高値血圧者に加えて、I度高血圧者も対象とし (*2)、GABAを含む食品の摂取が、GABAを含まない食品の摂取と比較して、SBPおよびDBPの低下作用を示すかを検証した研究を対象とした。2023年7月以前に発表された文献を国内外のデータベースで検索した結果、10研究が条件を満たしていたため、この10研究をレビューの対象とした。
【主な結果】
対象10研究の結果を統合したMAを行ったところ、正常血圧者の血圧には影響を与えず、正常高値血圧者、I度高血圧者に対し血圧低下作用を示すことが明らかとなった。また、10研究のGABA摂取量および摂取期間より、11.46 mg/日のGABAを12週間摂取することで、血圧低下作用が期待できると考えられた。
【科学的根拠の質】
対象10研究のエビデンスの確実性は、「高」~「中」であり、GABAの経口摂取による血圧低下作用には一定の科学的根拠があると考えられた。しかし、今回の採用研究の中には、GABAのみの効果をヒトで検証した例はなかったため、他の成分が効果に影響している可能性や、吸収代謝に影響を与える成分の有無などを完全に解明することは困難であった。これは食品の研究の限界と考えられる。
(*1)時間経過に伴う血糖値や血中中性脂肪値の増加量の推移から算出した面積を指し、食品摂取による糖や脂肪の吸収量の指標として用いられる。
(*2)正常血圧者はSBPが130 mmHg未満かつDBPが85 mmHg未満の方、正常高値血圧者はSBPが130~139 mmHg又はDBPが85~89 mmHgの方、I度高血圧者はSBPが140~159 mmHg又はDBPが90~99 mmHgの方を示す。 |