<L. acidophilus L-92:免疫機能の維持に役立つ機能について>
(ア)標題:
機能性関与成分L-92乳酸菌 (L. acidophilus L-92)(以下、L-92乳酸菌)の健康な人の免疫機能の維持に関する定性的研究レビュー
(イ)目的:
健常人に対して、L-92乳酸菌を含む食品の摂取が、プラセボ食品の摂取と比較して、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の働きを助け、体調に関連する自覚症状をより軽度に維持するかどうかを明らかにする。
(ウ)背景:
L-92乳酸菌はヒト由来の乳酸菌であり、これまでのヒトやマウスを用いた研究において、免疫を調節する働きが期待できる乳酸菌であることが報告されている。しかしながら、網羅的に調査した研究レビューは確認できなかったことから、今回研究レビューを実施した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性:
3つの電子データベースとハンドサーチを使用し、健常人を対象に、L-92乳酸菌(L. acidophilus L-92)の経口摂取が、pDCおよびNK細胞※に作用し、体調に関連する自覚症状に影響を及ぼすかについて調査した。検索の結果から、4つの文献(全部で5つのランダム化比較試験研究)を評価した。
(※pDCはウイルスや細菌の刺激を受けて活性化する免疫細胞である。NK細胞はpDCから刺激を受けて、外から入ってきた異物を認識し除去することが知られている。よってこれらは初期の生体防御機構において重要な役割を担っている細胞である。)
(オ)主な結果:
pDCへの作用についての採用文献は2報あり、対照群との比較で有意に高値であった。NK細胞への作用についての採用文献は1報あり、対照群との比較で有意に高値であった。体調に関する全身の自覚症状についての採用文献は3報あり、全身の自覚症状(疲労感、倦怠感、めまい・ふらつき、動悸・息切れ、ストレス、不眠、汗のかきやすさ)が対照群との比較でより軽度に維持されていた。また、体調に関する特定の部位の自覚症状についての採用文献は4報あり、特定の部位の自覚症状(喉、咳、鼻、頭の不快感)が対照群との比較でより軽度に維持されていた。各アウトカムに関するエビデンスの強さを総合的に判断し、「機能性について肯定的な根拠がある」と判断した。
(カ)科学的根拠の質:
5つの試験の被験者数はそれぞれ129名、221名、220名、90名、180名と十分な数であり、不精確(被験者が少ないなどにより結果が不確かなこと)はなかった。また、非直接性(対象者、試験手法、対照、目的などが異なること)や非一貫性(得られた結論が異なること)についても問題なく、公表バイアス(否定的結論の論文が公表されにくい可能性により生じる偏り)の影響も小さいと考えられた。以上のことから、得られた科学的根拠は強いと判断した。一方で、論文数が限られるため、今後さらなる検証も必要であると考えられた。
<L. acidophilus L-92:ハウスダスト・ホコリなどによる鼻の不快感を軽減する機能について>
(ア)標題:
機能性関与成分L-92乳酸菌(L. acidophilus L-92)の鼻の不快感軽減に関する定性的研究レビュー
(イ)目的:
健常人に対して、L-92乳酸菌を含む食品の摂取が、プラセボ食品の摂取と比較して、鼻の不快感を軽減するかどうかを明らかにする。
(ウ)背景:
これまでにL-92乳酸菌を含む食品を摂取したときに鼻の不快感を軽減する報告はあったが、健常人を対象とした研究報告を総合的に評価したものはなかったため、今回研究レビューを実施することとした。
(エ)レビュー対象とした研究の特性:
鼻の不快感を有する健常人を対象として、L-92乳酸菌の経口摂取による鼻症状への影響に関する研究を検索対象とした。国内外のデータベースで2018年8月1日に検索し、日本人を対象とした査読付きRCT文献1報を採用文献とした。
(オ)主な結果:
200億個のL-92乳酸菌を含む錠剤の摂取により、有意な鼻症状スコアの低下が確認でき、ハウスダストやホコリなどによる鼻の不快感を軽減する働きが示された。
(カ)科学的根拠の質:
UMIN-CTRの活用が十分に進んでいないことから出版バイアスの可能性が否定できないが、採用された文献は肯定的な結果であり、表示しようとする機能性を否定するものではないと判断した。採用文献が1報と少なくデータが十分でないため、今後の更なる研究が期待される。
<GABA:仕事や勉強などによる一時的な心理的ストレスや疲労感を軽減する機能について>
【標題】一時的な精神的ストレスや疲労感の緩和作用に関する研究レビュー
【目的】日常生活における精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感に対してGABA摂取の機能性を検証した。
【背景】GABAの日常生活における一時的な精神的ストレスや疲労感の緩和について、これまで網羅的に評価された文献はなかったため、検証するため本研究レビューを行った。
【レビュー対象とした研究の特性】国内外のデータベースを検索し、健常成人を対象とし、GABA・プラセボ摂取時を比較した試験である11報の文献を評価した。
【主な結果】一時的なストレスや疲労感を評価する指標「主観的指標(VAS、POMS)、客観的指標(唾液中のコルチゾール・クロモグラニンA、脳波の変動、自律神経活動の各指標)」により評価した結果、28 mg以上のGABAを摂取することで、仕事や勉強による一時的なストレスや疲労感を和らげる効果が確認された。
【科学的根拠の質】今回のレビューにおける採用文献は、いずれも日本人を対象とした研究であり、日本人への外挿性については問題ないと考えられる。バイアス・リスクの評価では、自律神経活動は「低」とし、主観的疲労感(VAS、POMS)、脳波の変動は「中」とし、唾液中ストレスマーカー(クロモグラニンA、コルチゾール)は「高」とした。さらにエビデンスの強さは主観的疲労感(VAS、POMS)、脳波の変動、自律神経活動は中(B)と評価し、唾液中ストレスマーカー(クロモグラニンA、コルチゾール)、は弱(C)と評価した。ただし、脳波の変動や自律神経活動においては、評価文献が少ないことから、さらなる効果の検討が望まれる。 |