■乳酸菌GR-1(Lactobacillus rhamnosus)および乳酸菌RC-14(Lactobacillus reuteri)
【標題】
届出食品に含まれる機能性関与成分「乳酸菌GR-1(Lactobacillus rhamnosus)および乳酸菌RC-14(Lactobacillus reuteri)」の膣内環境を整える機能性に関する研究レビュー
【目的】
健常成人女性におけるGR-1およびRC-14の膣内細菌叢正常化作用、即ち、膣内環境を整える機能の有無の評価を行うこと
【背景】
ヒトには種々の細菌群が無数に存在し、バランスを取りながら常在できる環境を作り上げている。膣内でも腸のような細菌叢は存在しているが、健常な女性ではLactobacillusが優位に存在し、膣内の常在細菌叢を形成している。Lactobacillusのなかでも、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus reuteriは膣内常在菌として知られ、これらを経口摂取することにより、バランスが乱れた膣内細菌叢を正常化する作用が示唆されている。
GR-1・RC-14の膣内細菌叢への影響を検討したヒト試験報告はいくつかあるが、健常者におけるGR-1・RC-14の経口摂取とその効果をレビュー報告は現在のところない。
【レビュー対象とした研究の特性】
国内外の臨床試験や学術論文のデータベースを使用し2018年11月以前の全論文を検索し、健常成人女性に対するランダム化比較試験の文献3件をレビュー対象とした。
【主な結果】
採択論文3報は、海外の健常成人女性、計195名を対象とした無作為盲検比較試験である。GR-1・RC-14を1日摂取量(1カプセルに両菌株の合計1.0×10^9~5.0×10^9 CFU含有、1カプセルを14~60日間経口摂取した結果、対照群(プラセボあるいは他種乳酸菌)と比較して、論文3報においてNugentスコアの有意な正常化や改善が認められた。GR-1およびRC-14の膣内細菌叢を正常に整える機能性を発揮することが示唆された。
【科学的根拠の質】
本研究レビューの総合評価は、論文の質やバイアスリスク等を踏まえ、該当する機能性について、科学的根拠、肯定的な結果があると判断した。根拠論文で、GR-1およびRC-14の経口摂取は、膣内細菌叢の環境を整える作用により、健常女性における膣内の健康な環境を保持させることが示唆された。
採択論文3報はいずれも経口摂取、使用菌種はいずれも本届出製品と同じGR-1およびRC-14で、各菌株を1カプセル中5.0×10^8 CFU以上含有し、機能性関与成分の同等性に問題はないと考えた。
レビューの限界:未発表の研究データ存在の可能性が否定できないが、文献検索は科学技術分野から医療分野の主要な3つのデータベースを使用しており、現時点で公表されている研究をほぼ網羅していると判断した。しかし、UMIN-CTRの活用が進んでいらず、出版バイアスの可能性は否定できない。
日本人を対象としたGR-1およびRC-14の膣内細菌叢への影響を検討した無作為化臨床試験は現在のところなく、計画も公開されていない。今後日本人を対象とした研究とその報告が望まれる。
■ビフィズス菌BB-12(B.lactis)
(ア)標題
最終製品プレフローラに含有する機能性関与成分ビフィズス菌BB-12(Bifidobacterium lactis、 BB-12 )による整腸作用の機能性に関するメタアナリシスを含む研究レビュー
(イ)目的
健常成人が「ビフィズス菌BB-12含有食品を摂取すると整腸作用があるのか」を検証するために研究レビューを実施した。
(ウ)背景
ビフィズス菌が腸内で増える、腸内環境を改善し便通の改善を導くことは知られているが、ビフィズス菌BB-12を摂取した健常成人における有効性は明確でなかった。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
研究論文のデータベースとしてPubMed(MEDLINE)(1946年から収録)、The Cochrane Library(1972年から収録開始)、医中誌Web(1903年から収録)、JDreamIII(1975年から収録)を用いて網羅的に検索した。期間は各データベースの初公開の時点から、最終検索日(2016年2月1日~2016年3月30日)までに公表されたものとした。
採用4報の研究は全て健康な成人を対象とし、論文3と論文4においては便秘傾向の健康な成人のみを対象としていた。これら4報はビフィズス菌BB-12またはLK512が0.9×10^9~5.2×10^9 CFU添付されたヨーグルトを試験食に、プラセボとしてビフィズス菌BB-12を含まないヨーグルトを用いていた。アウトカムには整腸作用の指標が用いられた。
対象集団は健常な成人男女、最終的に評価した論文数は33報、研究デザインはイヌリンを含む食品を摂取させ、プラセボ食品を摂取させた群、無介入のコントロール群、または介入前と比較し、糞便中のビフィズス菌量または排便回数、排便量を評価している臨床試験研究報告とした。
利益相反:レビューは第三者機関に実施を依頼し、当該機関に実施費用を支払った上実施されたものである。
採用4報は全て健康な成人を対象としているが、論文3と論文4ては便秘傾向の健康な成人のみを対象としていた。これら4報はビフィズス菌BB-12またはLK512が0.9×10^9~5.2×10^9 CFU添付されたヨーグルトを試験食に、プラセボとしてビフィズス菌BB-12を含まないヨーグルトを用いていた。アウトカムには整腸作用を表す各種指標が用いられていた。
研究デザインは、論文1と論文3はランダム化クロスオーバー試験、論文2はクロスオーバー試験、論文4はウォッシュアウト期間を設けた単一群を用いた比較試験であった。
論文2は厳密なランダム化による振り分けではないが、本文中に「試験開始前に日常の1週間あたりの排便頻度をアンケートにて調査し、偏りがないように被験者を2群に分け」という記述があり、実験手続きや統計解析も適切に行われており、解析に含めてよいと考えた。
論文4は投与前(1週間)、LKM512ヨーグルト投与期(2週間)、投与中止期(2週間)、プラセボ投与期(2週間)というスケジュールで行われた単一群による臨床試験である。ウォッシュアウト期間は特別短いわけではなく、LKM512投与によって腸内のBifidobacteriumは介入前と比較して有意に増えるが、ウォッシュアウト期間終了時には投与前と有意差がなく、時期効果は少ないと考えられる。被験者に盲検であったかの記述はなく、リスクはあるものの、実験手続きや統計解析は適切と判断し、今回の解析に含めてよいと判断した。
論文1と論文2においては「全被験者」での解析のほか、「便秘傾向者」「非便秘傾向者」のサブグループについても解析を行い、サブグループについての全結果も抽出した。論文1~4はいずれも連続変数を指標として評価し、後述するメタアナリスやエビデンス総体の評価は4報全て一緒に扱った。
(オ)主な結果
採用論文4報は、いずれも日本人対象、試験食はビフィズス菌BB-12添加ヨーグルト。ビフィズス菌BB-12の摂取量は一日当たり0.9×10^9~5.2×10^9 CFUであった。排便回数は4報中2報において対照群と比較し有意に増加した。(以下対照群と有意差のあったもののみ)。排便日数は1報で有意に増加、便の形状解析は4報中1報で形状の有意な改善が認められた。3報においてビフィズス菌数、2報において占有率が有意に増加していた。また悪玉菌(Clostridium)は4報中1報で有意に減少した。メタアナリシスを行い、排便回数は増加傾向があること、糞便菌叢内のビフィズス菌数・占有率が有意に増加することを示した。
(カ)科学的根拠の質
研究の限界:今回はキーワードに英語と日本語を用いたが、他言語による検索を行っておらず、存在する全論文を検索したという保証はなく、出版バイアスは完全に否定できない。メタアナリシスを行ったアウトカムについても改善傾向はみられたものの、論文数が3あるいは4報と少なく、funnel plotによる出版バイアスの考察は行えなかった。 |