◆スルフォラファングルコシノレート
【標題】スルフォラファングルコシノレートによる肝機能マーカー低減機能に関する研究レビュー
【目的】成人健常者を対象として、スルフォラファングルコシノレートの経口摂取による肝機能マーカーの低減機能について評価した。
【背景】摂取したスルフォラファングルコシノレートは体内でスルフォラファンに代謝され、吸収される。スルフォラファンは転写因子であるNuclear factor E2-related factor 2 (Nrf2)を介して第2相解毒酵素や抗酸化酵素を誘導することが知られている。また、動物実験において、スルフォラファングルコシノレートまたはスルフォラファンの摂取が肝疾患保護機能を有することが明らかになっている。このように、スルフォラファングルコシノレートには肝機能に影響を与える可能性があると考えられるが、健常者に絞って長期間摂取した際の肝機能に対する機能を評価した研究レビューは少ないため、システマティックレビューの手法を用いた解析を実施した。
【レビュー対象とした研究の特性】外国語及び日本語のデータベースを使用し、ランダム化比較試験(RCT)・準RCTを対象に検索をおこなった。対象の集団は、健常成人男女であり、最終的には1報の論文を採用した。
【主な結果】評価対象の1報を評価した結果、肝機能マーカーの一つである血中ALT値が有意に低下しており、その有効性が認められていた。また、対象者は45~64歳の肝機能マーカーがやや高めの健常男女であった。一日当たりのスルフォラファングルコシノレートの摂取量は24 mgであり、摂取期間は24週間であった。したがって、totality of evidenceの観点から、スルフォラファングルコシノレートの摂取は、肝機能マーカーがやや高めの中高齢者の血中ALT値の減少に関して肯定的であると判断した。
【科学的根拠の質】本研究レビューでは、スルフォラファングルコシノレートの摂取の効果について1報のRCT論文を評価した。本研究レビューの限界として、採用論文は日本人を対象としていたが、論文数が1報しかないため、今後さらなる研究が必要と考えられる。また、3つデータベースを用いて英語、和文の両方を検索したが、出版バイアスが存在する可能性はある。
◆γ-アミノ酪酸 (GABA)
【標題】GABAの血圧に及ぼす影響に関する研究レビュー
【目的】健常成人で血圧が正常または高めの方がGABAを経口摂取した際に血圧に及ぼす影響について検証した。
【背景】高血圧状態を低下させ、進行を抑えることは健康の維持・増進のためにも必要である。GABA は、血圧降下作用やデスクワークなどによるストレス緩和作用、睡眠の質改善作用などが報告されている。
【レビュー対象とした研究の特性】データベースより12件の論文が採用された。採用文献の GABA 1日摂取量は、12.3~120 mg であった。対象被験者は、14~161名で、正常血圧者を対象としていたのが1報、正常高値血圧者およびI度高血圧者を対象としていたのが10報、正常血圧者、正常高値血圧者およびI度高値血圧者を対象としていたのが1報であった。また、層別解析を行っている文献は8報であった。摂取期間は12~16週間で、拡張期血圧および収縮期血圧を評価していた。
【主な結果】収取期血圧および拡張期血圧ともに、プラセボ群と比較した結果、有意に降圧が認められた。また、層別解析の結果、正常高値血圧者に対する有意な血圧降下も認められた。
【科学的根拠の質】採用された文献12報は全て日本で行われた試験であった。従って、外挿性に問題はないと判断した。全てランダム化比較試験で行われていた。1報が単盲検であったが、バイアスリスク、非直接性、不精確、非一貫性、その他のバイアス (出版バイアス) などについて、無視できない深刻なリスク・問題等は無いと判断した。エビデンスの強さについては、収縮期血圧は強(A)、拡張期血圧は強(A)であり、科学的根拠の質は高いと考えられるが、限界として否定的な論文が出版されない出版バイアスの存在もあることから、本研究レビューの信頼性に完全に問題がないとは言い切れない。
【標題】GABAの睡眠の質に及ぼす影響についての研究レビュー
【目的】健常成人がGABA を経口摂取した場合、睡眠の質に影響を及ぼすかについて、臨床論文の検索とレビューを行い検証することを目的とした。
【背景】睡眠の質を改善することは、健康の維持・増進に寄与するものであると考えられる。GABA には、睡眠の質改善作用などが報告されているが、GABA の経口摂取が健常者の睡眠の質に対してどのような効果を与えるのかに関する検証は不十分であると考えられるため、本研究レビューを行った。
【レビュー対象とした研究の特性】データベースより適格基準に合致した5件の論文が採用された。採用文献の GABA 1日摂取量は、いずれも100 mg であった。採用文献全てにおいて睡眠の質を評価しており、3報が客観的睡眠指標である脳波測定を、また5報全てにおいて主観的睡眠指標 (視覚的評価スケール、アテネ式不眠尺度、ピッツバーグ睡眠質問票または OSA 睡眠調査票 MA 版) を用いて評価していた。
【主な結果】脳波測定による睡眠の質評価において、ノンレム睡眠時間が3報中2報有意に増加した。一日当たり GABA 100 mg の経口摂取は、睡眠の質 (入眠時間、眠りの深さ) を改善することが認められた。
【科学的根拠の質】採用された文献5報は全て日本で行われた試験であった。従って、外挿性に問題はないと判断した。5報中1報が非ランダム化比較試験で行われており、また2報が単盲検であったが、バイアスリスク、非直接性、不精確、非一貫性、その他のバイアス (出版バイアス) などについて、無視できない深刻なリスク・問題等は無いと判断した。しかし、出版バイアスの可能性を否定することはできず、今後さらなる臨床試験が望まれる。
【標題】GABAの一時的・精神的な負荷によるストレスや疲労感に及ぼす影響についての研究レビュー
【目的】 健常成人がGABAを経口摂取した場合、一時的・精神的な負荷によるストレスや疲労感に影響を及ぼすかについて、臨床論文の検索とレビューを行い検証することを目的とした。
【背景】現代社会の生活において、ストレスをコントローすることは健康の維持・増進のためにも必要であると言える。GABA には、ストレス緩和作用などが報告されているが、健常者の GABA 経口摂取が、一時的・精神的なストレスや疲労感にどのような効果を与えるのかに関する検証は不十分であると考えられるため、本研究レビューを行った。
【レビュー対象とした研究の特性】データベースより適格基準に合致した3件の論文が採用された。採用文献の GABA 1日摂取量は、25~50 mg であった。採用文献全てにおいて一時的な精神的ストレス負荷後のストレス状態や疲労感を評価しており、ストレス指標では、唾液中クロモグラニン A (3報)、唾液中コルチゾール (1報)、副交感神経活動 (1報) を、疲労指標では、VAS (2報)、POMS (1報)、疲労自己診断質問票 (1報) を用いていた。
【主な結果】ストレス指標及び疲労指標ともに、プラセボ群と比較した結果、有意にストレス及び疲労感が軽減されていることが認められた。
【科学的根拠の質】採用された文献3報は全て日本で行われた試験であった。従って、外挿性に問題はないと判断した。全てランダム化比較試験で行われていた。1報が単盲検であったが、バイアスリスク、非直接性、不精確、非一貫性、その他のバイアス (出版バイアス) などについて、無視できない深刻なリスク・問題等は無いと判断した。しかし、出版バイアスの可能性を否定することはできず、今後さらなる臨床試験が望まれる。 |