「標題」
糖の吸収を抑えることをサポートする
「背景および目的」
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足等により、我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数が増加している。その中でも、糖尿病患者数の増加は、超高齢社会を迎えた日本において極めて深刻な問題のひとつとなっている。これまでに、難消化性デキストリンの糖の吸収抑制作用について、メタアナリシスによって検証された報告はない。そこで本研究レビューでは、難消化性デキストリンの単回摂取がプラセボの単回摂取と比較して、糖の吸収抑制作用を示すかどうか検証した。
「レビュー対象とした研究の特性」
検索日は2019年7月14日であり、検索対象期間は、各データベースの開設または搭載されている最初の時点から最終検索日までの全期間とした。4つの電子データベースを使用し、1次スクリーニングの対象論文として267報が抽出された。さらに、2次スクリーニングでは、論文の本文内容を確認して40報を除外し、24報をデータの統合に用いる論文とし、メタアナリシスの対象論文とした。
本研究のデザインは、メタアナリシスを含む研究レビューである。空腹時血糖値が126mg/dL未満の成人を対象に難消化性デキストリンを用いて糖の吸収抑制について調査したランダム化比較試験(RCT)を収集した。各RCT論文のバイアスリスク、非直接性、非一貫性、不精確からの質の評価を行い、「血糖濃度曲線下面積」(AUC0-2hr)を評価指標としてメタアナリシスを実施した。また、エビデンス総体の評価およびFunnel plotによる出版バイアスの評価によりエビデンスの強さを評価した。なお、UMIN-CTR等の事前登録は行わず、前もって作成した実施計画書に従って行った。
「主な結果」
24報のRCT論文が抽出された。メタアナリシスの結果、難消化性デキストリン4.4~9.8gを単回摂取することによって、対照群と比較して介入群がAUC0-2hrを有意に低下させることが確認された。(統合効果量-11.39、95%信頼区間[-14.76, -8.02] P<0.00001)。
「科学的根拠の質」
難消化性デキストリン(食物繊維)を単回摂取することによって、糖の吸収抑制作用が期待できることが示された。未発表データが存在する可能性があり出版バイアスの存在は否定できなかったことから、継続した検証が必要である。
「標題」
脂肪の吸収を抑えることをサポートする
「目的および背景」
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足等により、我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数が増加している。高血圧、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病は動脈硬化疾患や虚血性心疾患を誘発する要因となっており、特に脂質異常症は動脈硬化の危険因子であることから、食生活の改善等による一次予防が望まれている。これまでに、難消化性デキストリンの脂肪の吸収抑制作用について、メタアナリシスによって検証された報告はない。そこで本研究レビューでは、空腹時血中中性脂肪値が200 mg/dL未満の成人に対して難消化性デキストリンの単回摂取がプラセボの単回摂取と比較して、脂肪の吸収抑制作用を示すかどうか検証した。
「レビュー対象とした研究の特性」
検索日は2019年7月2日であり、検索対象期間は、各データベースの開設または搭載されている最初の時点から最終検索日までの全期間とした。4つの電子データベースを使用し、1次スクリーニングの対象論文として126報が抽出された。さらに、2次スクリーニングでは、論文の本文内容を確認して7報を除外し、9報をデータの統合に用いる論文とした。その9報について臨床的・方法論的異質性を確認した結果、異質性の高い論文は無かったため、9報をメタアナリシスの対象論文とした。
本研究のデザインは、メタアナリシスを含む研究レビューである。4つの電子データベースを使用し、空腹時血中中性脂肪値が200 mg/dL未満の成人を対象に難消化性デキストリンを用いて脂肪の吸収抑制について調査したランダム化比較試験(RCT)を収集した。各RCT論文のバイアスリスク、非直接性、非一貫性、不精確から質の評価を行い、「血中中性脂肪濃度曲線下面積(AUC0-6hr)」を評価指標としてメタアナリシスを実施し、介入群と対照群の差のデータを統合した。また、エビデンス総体の評価およびFunnel plotによる出版バイアスの評価によりエビデンスの強さを評価した。なお、UMIN-CTR等の事前登録は行わず、前もって作成した実施計画書に従って行った。
「主な結果」
9報のRCT論文が抽出された。メタアナリシスによってデータを統合し統計解析した結果、難消化性デキストリン5~9 gを単回摂取することによって、対照群と比較して介入群がAUC0-6hrを有意に低下させることが確認された(統合効果量-93.42、95 %信頼区間[-150.08,-36.76]P=0.001)。
「科学的根拠の質」
難消化性デキストリン(食物繊維)を単回摂取することによって、脂肪の吸収抑制作用が期待出来ることが示された。未発表データが存在する可能性があり出版バイアスの存在は否定出来なかったことから、継続した検証が必要である。
「標題」
内臓脂肪を減らす
「目的および背景」
令和元(2019)年度の国民健康・栄養調査結果によるとBody Mass Index(以下BMI)が25kg/m2以上の肥満者の割合は、20歳以上の男性で33.0%、女性で22.3%であった。この10年間で有意な増減はみられないものの肥満者の割合は高い状態が続いている。これまでに、難消化性デキストリンの内臓脂肪低減作用について、研究レビューによって検証された報告はない。そこで本研究レビューでは、健常成人(肥満1度:BMI値25 kg/m2以上30 kg/m2未満を含む)に対して難消化性デキストリンの長期摂取がプラセボの長期摂取と比較して、内臓脂肪低減作用を示すかどうか検証した。
「レビュー対象とした研究の特性」
検索日は2021年4月13日であり、検索対象期間は、各データベースの開設または搭載されている最初の時点から最終検索日までの全期間とした。4つの電子データベースを使用し、1次スクリーニングの対象文献として115報が抽出された。1次スクリーニングでは重複していた5報と、適格基準に従い文献のタイトル、抄録内容、書誌情報から105報を除外し5報を抽出した。さらに、2次スクリーニングでは、論文の本文内容を確認して3報を除外し、2報を評価対象として採用した。
本研究のデザインは、定性的研究レビューである。4つの電子データベースを使用し、疾病に罹患していない健常成人を対象に難消化性デキストリンを用いて内臓脂肪の低減について調査したランダム化比較試験(RCT)を収集した。各RCT論文のバイアスリスク、非直接性、非一貫性、不精確から質の評価を行い、CT検査による「内臓脂肪面積値」を評価指標として定性的研究レビューを実施した。また、エビデンス総体の評価によりエビデンスの強さを評価した。なお、UMIN-CTR等に事前登録は行わず、事前に作成した実施計画書に従って行った。
「主な結果」
2報のRCT論文が抽出された。いずれの論文においても内臓脂肪を低減することが認められた。エビデンス総体の質評価においては、バイアスリスク、非直接性、非一貫性が低(0)、不精確、その他(出版バイアス等)が中/疑い(-1)であった。これらの結果を総合的に評価し、エビデンスの強さを「B」と判定した。
「科学的根拠の質」
難消化性デキストリン(食物繊維)の長期摂取により、内臓脂肪低減作用が期待できることが示された。また、その1回あたりの有効量は難消化性デキストリン(食物繊維)5~9gであり、1日に3回食事と共に摂取していた。なお、未発表データが存在する可能性があり出版バイアスの存在は否定できなかったことから、継続した検証が必要である。 |