【イヌリン(食物繊維)の機能について】
〇腸内環境を整えることについて
①標題
イヌリンの経口摂取による腸内環境能への影響についての研究レビュー。
②目的
健常者におけるイヌリンの経口摂取による腸内環境への影響を、ビフィズス菌と乳酸菌数を指標として検討した。
③背景
イヌリンは以前よりヒトにおける整腸効果についての報告は各々なされていたが、今回改めて体系的に評価し、健常人におけるイヌリンの経口摂取が腸内環境に与える影響するについて検討した。
④レビュー対象とした研究の特性
データベースは、医中誌Web、JDreamⅢ、PubMed (Medline)、EBSCOhost、Web of Science Core Collectionを用い日本語と英語の論文を検索した。対象とした被験者は妊産婦や授乳婦を除く健康な成人男女であり、介入はイヌリンの経口摂取とした。ただ摂取する剤形は限定をしていない。評価は腸内環境に関連する指標のビフィズス菌と乳酸菌数とし、研究デザインはプラセボ対照の臨床試験とした。
⑤主な結果
文献検索により40報の文献が抽出され、除外基準による選抜および研究の質を評価した結果、定性評価できる研究論文は7報であった。糞便中のビフィズス菌数において、評価した7報中6報では一日のイヌリン量4.5~15.4gを14日間以上の摂取で有用であった。残り1報はイヌリン9.95gの摂取であったが、期間が7日間と短かったため効果が観察されなかったと考えられる。乳酸菌数については、5報について検討したが、群間において有意差のない論文が5報中4報であった。
⑥科学的根拠の質
本研究レビューの限界として、国内外の複数の文献データベースを使用したが、既に臨床試験が終わっているものの論文化されていない研究が存在する可能性を排除できない。また、英語と日本語以外の情報は今回のレビューで除外したため、本レビューには出版バイアスが含まれる可能性が考えられる。
【GABAの機能について】
〇肌の乾燥が気になる方の肌の弾力を維持し、肌の健康を守るのを助ける機能について
①標題
肌弾力維持機能に関する研究レビュー
②目的
肌弾力維持に対するGABAの機能性について検証した。
③背景
真皮の主成分である弾性線維は皮膚・動脈・肺などに多くあって、各臓器の伸縮性を担っており、加齢や紫外線等の影響で劣化すると報告されている。弾性線維の低下による真皮層の菲薄化は、皮膚の脆弱性(スキン-テア)に繋がるとも考えられる。皮膚の脆弱性予防は国民の健康的な生活維持にきわめて重要である。
④レビュー対象とした研究の特性
国内外の文献データベースを検索し、健康な成人を対象とし、GABAとプラセボを比較した試験で肌の弾性を評価している1報を評価した。
⑤主な結果
GABA(100 mg/日)摂取により、健康女性における肌弾力低下を緩和する効果が確認された。肌の構造は全身で共通であり性差もないことから、GABAは肌の弾力を維持し肌の健康を守るのを助ける機能があると評価した。
⑥科学的根拠の質
今回のレビューにおける採用文献は日本人女性を対象としている。日本人への外挿性については問題なく、肌の構造に性差はないので本レビューの対象者に合致していると判断した。採用文献のバイアス・リスクは「低」であった。その他バイアスで採用文献1報のみのため出版バイアスが否定できないため「中」とし、エビデンスの強さは「中(B)」と評価した。また採用文献の調査部位が頬のみであることから、今後さらなるエビデンスの蓄積が望まれる。
〇デスクワークや家事などによる一時的なストレスや疲労感の軽減およびリラックス作用について
①標題
一時的な精神的ストレスや疲労感の緩和作用に関する研究レビュー
②目的
日常生活における精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感に対してGABA摂取の機能性を検証した。
③背景
GABAの日常生活における一時的な精神的ストレスや疲労感の緩和について、これまで網羅的に評価された文献はなかったため、検証するため本研究レビューを行った。
④レビュー対象とした研究の特性
英語、日本語の医学論文データベースを検索し、精査した結果、健常成人を対象とし、GABA・プラセボ摂取時を比較した試験である11報の文献を評価した。
⑤主な結果
一時的なストレスや疲労感を評価する指標「主観的指標(VAS、POMS)、客観的指標(唾液中のコルチゾール・クロモグラニンA、脳波の変動、自律神経活動の各指標)」により評価した結果、28 mg以上のGABAを摂取することで、仕事や家事などによる一時的なストレスや疲労感を和らげる効果、および100㎎GABAを摂取することで一時的なリラックス作用が確認された。
⑥科学的根拠の質
今回のレビューにおける採用文献は、いずれも日本人を対象とした研究であり、日本人への外挿性については問題ないと考えられる。バイアス・リスクの評価では、自律神経活動は「低」とし、主観的疲労感(VAS、POMS)、脳波の変動は「中」とし、唾液中ストレスマーカー(クロモグラニンA、コルチゾール)は「高」とした。さらにエビデンスの強さは主観的疲労感(VAS、POMS)、脳波の変動、自律神経活動は中(B)と評価し、唾液中ストレスマーカー(クロモグラニンA、コルチゾール)、は弱(C)と評価した。ただし、脳波の変動や自律神経活動においては、評価文献が少ないことから、さらなる効果の検討が望まれる。 |