【鼻の不快感を緩和する機能について】
標題
機能性関与成分ケルセチンの花粉、ほこり、ハウスダストなどによる目と鼻の不快感とそれに関連するQOLに対する機能性に関する研究レビュー。
目的
目や鼻に不快感を有する成人が、ケルセチンの摂取で花粉、ほこり、ハウスダストなどによる目や鼻の不快感を軽減させる機能を有するか検証することを目的としました。
背景
ケルセチンには、抗酸化作用、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、脳血管疾患の予防、抗腫瘍効果、降圧作用、強い血管弛緩作用が報告されています1)。ケルセチンの抗炎症作用はヒスタミンの生成や遊離など炎症に関与するいくつかの過程を抑制するためと考えられています。アレルギーに対するケルセチンの生理活性としては、in vitro試験において肥満細胞活性の阻害作用、ヒスタミン放出の阻害作用、好酸球性炎症の抑制などの報告がされています2)。しかしながら目や鼻の不快感に対する研究レビューは報告されていないため、ケルセチンの摂取が、目や鼻の不快感を有する成人において機能を有するか検証するための研究レビューを実施しました。
レビュー対象とした研究の特性
2020年8月19日に英語、日本語文献データベースにて検索を実施した結果、日本人の成人男女を対象とした無作為化二重盲検比較試験が行われた1報を評価対象としました。
主な結果
対象となった研究の被験者は日本人の成人で、アレルギー性鼻炎QOL調査票(JRQLQ)の鼻目症状スコアが相対的に高い健常域者および軽症域者男女であった。ケルセチン200 mg/日を含む被験食品の経口摂取による4週間の介入試験で、JRQLQ総スコア(p=0.036)、QOL総スコア(p=0.020)、睡眠スコア(p=0.000)、身体スコア(p=0.001)が有意に改善していた。また個別のJRQLQの質問項目では、以下の項目で被験食品群がプラセボ対照群と比較して有意に低値であった。くしゃみ(p=0.040)、スポーツ、ピクニックなど野外活動の支障(p=0.011)睡眠障害(p=0.006)、疲労(つかれやすい)(p=0.001)、フェイススケール(p=0.025)。また、副次アウトカムであるアレルギー性鼻炎の重症度分類では、以下の項目で被験食品群がプラセボ対照群と比較して有意に低値であった。くしゃみ(p=0.010)、鼻漏(p=0.008)、日常生活への支障度(p=0.014)。
科学的根拠の質
全体のバイアス・リスクを考慮すると、合計サンプル数が60例、採用文献が1報であったため、正確性はやや不精確、非一貫性評価は「高」となりました。全体のバイアスを考慮したエビデンス総体のエビデンスの確実性は中程度でした。未発表研究の検索を行い、出版バイアスも評価しましたが、完全には出版バイアスが存在する可能性も否定できません。
【食後の血中中性脂肪の上昇を緩やかにする機能について】
標題
食後の血中中性脂肪に関するケルセチンの機能性に関する研究レビュー
目的
健常成人を対象に、食後の血中中性脂肪に関するケルセチンの機能性について検証するために研究レビューを実施しました。
背景
ケルセチンには、抗酸化3)、抗炎症4)、降圧5)などの作用があることを示唆する報告があり、これらの作用に加えて、ケルセチンの膵臓リパーゼ阻害作用についても報告されています6)。そのため、ケルセチンは食後の血中中性脂肪の上昇を抑制する作用を持つ可能性が考えられました。一方、食後血中中性脂肪値の上昇は心血管疾患のリスクファクターのひとつとして認識されています。しかしながら、健常成人を対象として、ケルセチンの食事で摂取した脂肪分の吸収をゆるやかにして、食後の血中中性脂肪の上昇をゆるやかにする機能性を評価した報告は多くありません。そこで本研究レビューでは、健常成人を対象に、ケルセチン含有食品摂取による食事で摂取した脂肪分の吸収をゆるやかにして、食後の血中中性脂肪の上昇をゆるやかにする機能性について検証しました。
レビュー対象とした研究の特性
データベース検索の結果、1報の論文を採用しました。健常な48~68歳の男性49名を被験者としたランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験で、1日あたりケルセチン二水和物150 mgを含む被験食品、もしくはプラセボ食品摂取による介入を8週間実施していました。
主な結果
食後の血中中性脂肪濃度は、食後30分、1時間、2時間後において、プラセボと比較して有意に低値を示しました(p<0.05)。また、食後0から4時間の血中中性脂肪濃度のAUCは、プラセボと比較して有意に低値を示しました(p<0.05)。
科学的根拠の質
採用論文の結果は肯定的な内容でした。論文は英語と日本語で検索を行い、また臨床研究登録データベースで未発表研究の検索も行いましたが、出版バイアスは否定できません。また非直接性、非一貫性、不精確など全体のバイアスを考慮したエビデンス総体のエビデンスの確実性は中程度でした。採用論文が1報であったため今後のさらなる研究が求められます。
参考文献
1) Winkel-Shirley, Brenda (June 2001). “Flavonoid Biosynthesis. A Colorful Model for Genetics, Biochemistry, Cell Biology, and Biotechnology”. Plant Physiol 126 (2): 485-493. doi:10.1104/pp.126.2.485
2) J. Mlcek et. al. Quercetin and Its Anti-Allergic Immune Response. Molecules. 2016; 21 (5) 623.
3) Suematsu N et al. Protective effects of quercetin against hydrogen peroxide-induced apoptosis in human neuronal SH-SY5Y cells. Neurosci Lett. 2011;504(3):223-227.
4) Leiherer A et al. Phytochemicals and their impact on adipose tissue inflammation and diabetes. Vascul Pharmacol. 2013;58(1-2):3-20.
5) Duarte J et al. Antihypertensive effects of the flavonoid quercetin in spontaneously hypertensive rats. Br J Pharmacol. 2001;133(1):117-124.
6) Zhou JF et al. Quercetin is a promising pancreatic lipase inhibitor in reducing fat absorption in vivo. Food Bioscience. 2021;43:101248 |