食後の血中中性脂肪値の上昇をおだやかにする機能
標題:難消化性デキストリン(食物繊維)の食後血中中性脂肪上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
目的:空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人に対して難消化性デキストリン(食物繊維)を摂取することにより、食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用が見られるかを確認する。
背景:現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数が増加している。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化疾患や虚血性心疾患を誘発する要因となっており、特に脂質異常症は動脈硬化の危険因子であることから、食生活の改善などによる一次予防が望まれている 。さらに、近年、脂質異常症の1つとして食後に血中中性脂肪値の高い状態が長時間継続する食後高脂血症が、動脈硬化症や冠動脈疾患の発症を早めるリスク因子であることが明らかとなってきた。そのため、食後血中中性脂肪値の上昇を抑制する食品素材が注目視されている。難消化性デキストリン(食物繊維)は、食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用を有することが報告されていおり、日本では、難消化性デキストリン(食物繊維)は特定保健用食品に使用されており、「食後の血中中性脂肪値の上昇を抑制する」といった表示内容の許可を受けた特定保健用食品は複数存在する。そこで今回、難消化性デキストリン(食物繊維)の食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)を実施した。
レビュー対象とした研究の特性:PubMed、Cochrane Library、医中誌Web、CiNii Articlesの4つの文献検索電子データベースを使用し、空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人(空腹時血中中性脂肪値150mg/dL 未満の健常成人および空腹時血中中性脂肪値150 以上、200mg/dL 未満の軽症者)を対象に難消化性デキストリン(食物繊維)を用いて食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用について調査したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。
主な結果:最終的に9報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、全ての評価項目において、対照群と比較して難消化性デキストリン(食物繊維)摂取群が食後血中中性脂肪値を有意に低下させることが確認された。難消化性デキストリン(食物繊維として)の1回摂取量はほとんどの論文で5 gであったことから、推奨1回摂取量は5 gが妥当であると考えられた。
科学的根拠の質:バイアスリスクは認められたものの、PICOとの不一致はなく非直接性はなかった。また、各アウトカムの総例数が多いため不精確性はなく、研究間の異質性がないことから、非一貫性もないと判断した。公表バイアスについては存在は否定されなかったものの、未公表論文を想定しても統合効果量は有意のままであったことから、公表バイアスの影響は小さいと判断した。さらに、メタアナリシスによる統合効果は有意であった。以上のことから、科学的根拠の質は高いと判断した。
2. 食後の血糖値の上昇をおだやかにする機能
標題:難消化性デキストリン(食物繊維)を用いた健常成人に対する食後血糖値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
目的:健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)に対して難消化性デキストリン(食物繊維)を摂取することにより、食後血糖値の上昇抑制作用が見られるかを確認する。
背景:現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数が増加している。その中でも、糖尿病患者数の増加は、超高齢社会を迎えた日本において極めて深刻な問題のひとつとなっている。糖尿病に罹患しないためには、食事療法などにより食後血糖値をコントロールすることが非常に重要であると言われている。中でも食事療法では、食物繊維の摂取による2型糖尿病の発症リスクの改善効果が報告されており、食物繊維が有する血糖値調節効果が期待されている。日本では難消化性デキストリン(食物繊維)は特定保健用食品にも使用されており、「食後血糖値の上昇を抑制する」といった表示内容の許可を受けた特定保健用食品が複数存在する。そこで今回、難消化性デキストリン(食物繊維)の食後血糖値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)を実施した。
レビュー対象とした研究の特性:PubMed、Cochrane Library、医中誌Web、CiNii Articles の4 つの電子データベースを使用し、健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)を対象に難消化性デキストリン(食物繊維)を用いて食後血糖値の上昇抑制作用について調査したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。
主な結果:最終的に43報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、全ての評価項目において、対照群と比較して難消化性デキストリン(食物繊維)摂取群が有意に食後血糖値を低下させることが認められた。難消化性デキストリン(食物繊維)摂取量の中央値は5 gであった。
科学的根拠の質:バイアスリスクは認められたものの、PICOとの不一致はなく非直接性はなかった。また、各アウトカムの総例数が多いため不精確性はなく、研究間の異質性がないことから、非一貫性もないと判断した。公表バイアスについては存在は否定されなかったものの、未公表論文を想定しても統合効果量は有意のままであったことから、公表バイアスの影響は小さいと判断した。さらに、メタアナリシスによる統合効果は有意であった。以上のことから、科学的根拠の質は高いと判断した。
おなかの調子を整える機能
標題:難消化性デキストリン(食物繊維)を用いた健常成人に対する整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
目的:健常成人あるいは便秘傾向の成人に対して難消化性デキストリン(食物繊維)を摂取することにより、整腸作用(便通改善作用)が見られるかを確認する。
背景:現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームを初めとした生活習慣病の患者数が増加している。食生活を見直すことが注目視されている中で、食物繊維が糖尿病、肥満といった疾患や生活習慣病に対する予防効果があると言われており、第6の栄養素としてその重要性が認識されている。中でも水溶性食物繊維の一種である難消化性デキストリン(食物繊維)は、便通および便性改善作用を持つことが報告されている。そこで、難消化性デキストリン(食物繊維)の整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)を実施した。
レビュー対象とした研究の特性:PubMed、Cochrane Library、医中誌Web、CiNii Articles の4 つの電子データベースを使用し、健常成人あるいは便秘傾向の成人を対象に難消化性デキストリン(食物繊維)を用いて整腸作用について調査したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。
主な結果:最終的に26報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、「排便回数」「排便量」において、対照群と比較して難消化性デキストリン(食物繊維)摂取群は有意な便通改善作用が認められた。さらに、難消化性デキストリン(食物繊維)摂取量の中央値は5 gであった。
科学的根拠の質:バイアスリスクは認められたものの、PICOとの不一致はなく非直接性はなかった。また、各アウトカムの総例数が多いため不精確性はなく、研究間の異質性がないことから、非一貫性もないと判断した。公表バイアスについては存在は否定されなかったものの、未公表論文を想定しても統合効果量は有意のままであったことから、公表バイアスの影響は小さいと判断した。さらに、メタアナリシスによる統合効果は有意であった。以上のことから、科学的根拠の質は高いと判断した。 |