<血圧>
【標題】血圧低下作用に関する研究レビュー
【目的】血圧が高めの健常者に対するGABAの経口摂取による血圧を低下させる効果について検証することを目的とした。
【背景】GABAは発酵食品などに含まれ、日常的に摂取されているアミノ酸であり、血圧降下作用があることが知られている。そこでGABAの摂取による血圧が高めの健常者に対する血圧低下効果を研究レビューにて検討した。
【レビュー対象とした研究の特性】英語、日本語の医学論文データベースを検索し、健常成人対象でGABAまたはプラセボ摂取時を比較した試験で血圧を評価した文献15報を評価対象とした。いずれも日本人を対象とした試験であった。
【主な結果】正常高血圧(収縮期血圧 130~139 mmHg 又は拡張期血圧 85~89 mmHg)の人において、1日あたり12.3mg~80mgのGABA摂取時はプラセボ摂取時と比較して、有意に低下する効果が認められた。また、正常な血圧の人のみを対象とした場合は正常な血圧を維持した。
【科学的根拠の質】採用文献はほとんどプラセボを対照としたランダム化二重盲検並行群間試験で、研究レビューの科学的根拠の質は高いと考えられる。本研究レビューの限界については、幅広く文献の検索を実施しているが、未報告の研究が存在する可能性があり、出版バイアスの可能性もあると考えられるため、今後も新しい研究報告について定期的にチェックする必要がある。
<活気・活力感>
【標題】一時的な活気・活力感の低下軽減効果に関する研究レビュー
【目的】: GABAの経口摂取による日常生活における一時的な活気・活力感の低下を軽減する効果について検証することを目的とした。
【背景】精神的負荷、身体的負荷に関わらず負荷が増大することは十分な休息を得ていれば負担にはならないが、一定期間十分な休息を得ずに継続した負荷がかかる場合、一時的な活気・活力が低下することが考えられる。GABAは、デスクワークなどを主体とする精神負荷作業における一時的なストレスや疲労感の緩和、睡眠の質改善効果、一時的な活気・活力の維持・改善について、いくつか報告されている。本研究レビューでは、GABAによる一時的な活気・活力感の低下を軽減する効果について検討した。
【レビュー対象とした研究の特性】英語、日本語の医学論文データベースを検索し精査した結果、健康な成人男女を対象とし、GABA摂取する群とプラセボ群を比較した試験でPOMS2-AS「活気-活力」を評価している1報を評価した。
【主な結果】日常生活により一時的な活気・活力感が低下している(うつ病や慢性疲労症候群の疾患ではない)健康な日本人成人男女が、GABA100㎎/日を継続的に摂取した場合に、プラセボを摂取した場合に比べて、一時的な活気・活力感の低下が有意に軽減されたことが認めれらた。
【科学的根拠の質】採用文献のバイアスリスクは低程度であり、査読ありのRCT研究で、科学的根拠の質は高いと考えられる。本研究レビューの限界として、論文数が少ないこと、バイアスリスクが完全に否定できなかったことが挙げられる。
<ストレス・疲労感>
【標題】仕事や勉強などによる一時的なストレスや疲労感の緩和効果に関する研究レビュー
【目的】日常生活における精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感に対してGABAの摂取による改善効果を検証することを目的とした。
【背景】GABAのデスクワークなどを主体とする精神負荷作業における疲労感の緩和について、個々の文献では報告されているものの、網羅的に評価された文献はなかった。そこでGABAの精神的ストレスがかかる作業後の疲労感緩和効果について検証するため、本研究レビューを行った。
【レビュー対象とした研究の特性】英語、日本語の医学論文データベースを検索し、精査した結果、健常成人を対象とし、GABAまたはプラセボ摂取時を比較した試験である11報の文献を評価対象とした。
【主な結果】一時的なストレスや疲労感を評価する主観的指標(VAS、POMS)または客観的指標(唾液中のコルチゾール・クロモグラニンA、脳波の変動、自律神経活動の各指標)を用いて評価した結果、28 mg以上のGABAを摂取することで、仕事や勉強などによる一時的なストレスや疲労感を和らげる効果が確認された。
【科学的根拠の質】採用された研究論文は査読付きランダム化二重盲検コントロール比較試験であり、エビデンスの一貫性など特に問題は認められず、科学的根拠の質は高いと考えられる。本研究レビューの限界として、報告数、被験者数ともに少ないことから、バイアスの存在が完全に否定できないことが考えられる。
<睡眠の質(眠りの深さ)>
【標題】睡眠の質(眠りの深さ)に関する研究レビュー
【目的】GABA摂取による睡眠の質(眠りの深さ)を改善する効果について検証することを目的とした。
【背景】GABA摂取により、精神的ストレスがかかる作業における一時的な疲労感を軽減することや、睡眠の質を改善することが既に報告されている。そこで、健常成人に対してGABAの摂取による日常生活における睡眠の質(眠りの深さ)改善への効果を研究レビューにて検討した。
【レビュー対象とした研究の特性】英語、日本語の医学論文データベースを検索し、健康成人対象でGABAまたはプラセボ摂取時を比較した試験で脳波を評価している文献を2報採用し評価した。
【主な結果】GABA摂取(100 mg/日)の効果として、採用文献2報で、深い睡眠時間の有意な増加を示した。また1報では、ストレス状況や疲労感の違いによる層別解析を実施した場合、一時的な疲労感やストレスをより強く感じている人のノンレム睡眠ステージ3の時間が、GABA摂取時はプラセボ摂取時と比較して有意に増加した。以上のことから、GABAは、睡眠の質に不満を持ち、かつ、一時的な疲労感やストレスを感じている者において、睡眠の質(眠りの深さ)を向上させる効果が認められた。
【科学的根拠の質】採用された研究論文は査読付きランダム化二重盲検コントロール比較試験であり、客観的評価指標である脳波であるため、科学的根拠の質は高いと考えられる。本研究レビューの限界として、報告数が少ないことから、バイアスの存在が完全に否定できないことが考えられる。
<肌の弾力>
【標題】肌弾力維持機能に関する研究レビュー
【目的】GABAの摂取による健康な成人男女の肌弾力を維持する効果について検証することを目的とした。
【背景】真皮の主成分である弾性線維は皮膚・動脈・肺などに多くあって、各臓器の伸縮性を担っており、加齢や紫外線等の影響で劣化すると報告されている。弾性線維の低下による真皮層の菲薄化は、皮膚の脆弱性(スキン-テア)に繋がるとも考えられる。皮膚の脆弱性予防は国民の健康的な生活維持にきわめて重要である。
【レビュー対象とした研究の特性】英語、日本語のデータベースを検索し精査した結果、健康な成人を対象とし、GABAとプラセボを比較した試験で、肌の弾性を評価している1報を評価対象とした。
【主な結果】採用文献において、GABA(100 mg/日)摂取により健康女性における肌弾力低下を緩和する効果が確認された。肌の構造は全身で共通であり性差もないことから、GABAは男女ともに対して肌の弾力を維持し肌の健康を守るのを助ける機能があると評価した。
【科学的根拠の質】採用文献はランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験の査読付き論文であり、評価指標も国内外において広く用いられている手法であることから、科学的根拠の質は問題ないと判断した。限界として、採用文献が1報と少ないため出版バイアスは否定できず、今後さらなるエビデンスの蓄積が望まれる。
[1] 針谷毅ら.アレルギー, 49, 463-471 (2000)
[2] 相生章博ら.和歌山医学, 53, 113-120 (2002)
[3] 佐藤育子ら.月刊ナーシング, 26, 98-103 (2006)
[4] 福田悠.弾性線維と疾患.Connective Tissue, 24, 135-140 (1992)
[5] 2018年1月24日 中央社会保険医療協議会 総会 第386回議事録(厚生労働省HPより) |