1.食事から摂取した糖の吸収を抑える機能
(ア)標題
難消化性デキストリンの糖の吸収抑制効果に関する調査
(イ)目的
健常成人が難消化性デキストリンを含む食品を摂取した場合、含まない食品を摂取した場合と比較して糖の吸収を抑制するか検証することを目的とした。
(ウ)背景
難消化性デキストリンは、二糖類分解酵素を阻害することで食事由来の糖の吸収を抑えると考えられており、ヒト試験で当該効果について多数報告されている。しかし、難消化性デキストリンのヒトに対する当該効果について明確ではなかったため、健常成人に対する糖吸収抑制効果に関する研究論文を集め、当該効果を総合的に評価した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
6つのデータベースを用い、2019年7月4日までに公表された文献またはヒト試験を検索した。その結果、レビュー対象となる文献が24報得られた。4.4~9.8 gの難消化性デキストリンを含む食品と含まない食品の2群を設けて単回摂取させて効果を比較する試験方法で実施されていた。対象者は健常成人男女であった。糖の吸収抑制効果は、摂取してから2時間後までの血中の糖の総量で評価されていた。また、利益相反については、採用文献24報の内1報で、試験食品に含まれる難消化性デキストリン製造元の社員が著者に含まれていた。
(オ)主な結果
24報を統合して評価した結果、難消化性デキストリン4.4~9.8 gを単回摂取した群で、含まない食品を単回摂取した群よりも血中の糖が有意に低下した。また、難消化性デキストリンを含む食品の摂取に起因する有害事象の報告は無かった。
(カ)科学的根拠の質
本レビューで採用した研究は、研究の質に重度な問題は認められず、各研究を統合して評価した結果、1回4.4~9.8 gの難消化性デキストリンの単回摂取により血中の糖が有意に低下することが示された。よって、健常成人に対する難消化性デキストリンの機能性に関する科学的根拠は強いと判断した。ただし、1件の未報告研究が存在した。しかしながら、その後の情報が公開されておらず追跡調査が出来なかったことから、未発表データが存在する可能性があり出版バイアスの可能性は否定出来ない。したがって、引き続き検証する必要がある。
2.食事から摂取した脂肪の吸収を抑える機能
(ア)標題
難消化性デキストリンの脂肪の吸収抑制効果に関する調査
(イ)目的
健常成人が難消化性デキストリンを含む食品を摂取した場合、含まない食品を摂取した場合と比較して脂肪の吸収を抑制するか検証することを目的とした。
(ウ)背景
難消化性デキストリンは、消化管において胆汁酸ミセルを安定化させ、ミセルの崩壊を防ぐことで食事由来の脂肪の吸収を抑えると考えられており、ヒト試験で当該効果について多数報告されている。しかし、難消化性デキストリンのヒトに対する当該効果については明確ではなかったため、健常成人に対する脂肪吸収抑制効果に関する研究論文を集め、当該効果を総合的に評価した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
6つのデータベースを用い、2019年7月2日までに公表された文献またはヒト試験を検索した。その結果、レビュー対象となる文献が9報得られた。5~9 gの難消化性デキストリンを含む食品と含まない食品の2群を設けて単回摂取させて効果を比較する試験方法で実施されていた。対象者は健常成人男女および血中中性脂肪がやや高めの成人男女であった。脂肪の吸収抑制効果は、摂取してから6時間後までの血中の中性脂肪の総量で評価されていた。また、利益相反については、採用文献9報の内3報で、試験食品に含まれる難消化性デキストリン製造元の社員が著者に含まれていた。
(オ)主な結果
9報を統合して評価した結果、健常成人および血中中性脂肪がやや高めの成人を対象とした場合、難消化性デキストリン5~9 gを単回摂取した群で、含まない食品を単回摂取した群よりも血中の脂肪が有意に低下した。また、機能性表示食品の対象者である健常成人のみを対象とした場合でも同様の効果が確認された。また、難消化性デキストリンを含む食品の摂取に起因する有害事象の報告は無かった。
(カ)科学的根拠の質
健常成人および血中中性脂肪がやや高めの成人、健常成人のみを対象としたいずれの場合でも、本レビューで採用した研究は、研究の質に重度な問題は認められず、各研究を統合して評価した結果、1回5~9 gの難消化性デキストリンの単回摂取により血中の脂肪が有意に低下することが示された。よって、健常成人に対する難消化性デキストリンの機能性に関する科学的根拠は強いと判断した。ただし、1件の未報告研究が存在した。しかしながら、その後の情報が公開されておらず追跡調査が出来なかったことから、未発表データが存在する可能性があり出版バイアスの可能性は否定出来ない。したがって、引き続き検証する必要がある。 |