【標題】
プシコースの健常成人に対するエネルギー代謝における脂肪の消費を高める機能に関する研究レビュー
【目的】
健常成人に対して、プシコースの単回摂取がエネルギー代謝における脂肪の消費を高めるかについて評価した。
【背景】
肥満は、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態であると定義され、糖尿病、脂質異常症、心血管疾患等の様々な疾患の要因となる。そのため、健康日本21では「肥満者の減少」が目標として掲げられており、肥満の予防や改善は重要な課題とされている。肥満の予防には、食生活の改善によるエネルギー摂取量の調整および日々のエネルギー消費量の増加を組み合わせたエネルギー出納を維持することが必要であり、肥満への対応策の1つとして、エネルギー代謝における脂肪の消費を高める食品素材が注目されている。そこで、健常成人において脂肪の燃焼を促進する(消費を高める)ことが報告されているプシコースについて、研究レビューを実施した。
【レビュー対象とした研究の特性】
・文献検索日:2021年8月3日
・検索対象期間:各データベース開設または搭載されている最初の時点から検索日までの全期間
・対象集団の特性:健常成人
・最終的に評価した文献数:3報
・研究デザイン:ランダム化比較試験
・利益相反情報:松谷化学工業㈱が研究レビューを実施
【主な結果】
プシコースの摂取によりエネルギー代謝における脂肪の消費を高めることが示され、その有効量は1回当たりプシコース5gであった。なお、この結果は日常生活(安静時や日常活動時)において認められた。
【科学的根拠の質】
本研究レビューは研究数が3報と少なくメタアナリシスを実施できなかったため、定性的なレビューとした。しかし、いずれの研究もランダム化比較試験で実施され、一貫して有意な結果が得られていたため信頼性は高いと考えられる。ただし、未発表データが存在する可能性があり出版バイアスの存在を否定できなかったことから、継続した調査が必要である。
【標題】
機能性関与成分フラクトオリゴ糖(FOS)による整腸作用促進に関するシステマティック・レビュー
【目的】
健常成人を対象に、フラクトオリゴ糖(FOS)の摂取が善玉菌であるビフィズス菌を増加させて、排便頻度や便性状を改善するなどお腹の調子を整えるかについて、ヒト試験文献に対してシステマティック・レビュー(SR)の手法に基づいて評価するとともに、その有効投与量を推定することを目的とした。
【背景】
FOSは日常の食生活で摂取する野菜、果物にも含まれている食品成分である。ヒトを対象とした試験において、FOSの継続的な摂取により、善玉菌であるビフィズス菌の増加および悪玉菌の減少といった腸内フローラの改善に伴って、排便頻度の改善や便性状の改善などをもたらすことが示されている。そこで今回、FOSの経口摂取が善玉菌であるビフィズス菌を増やし、整腸作用を示すかについてシステマティック・レビューの手法を用いて検討した。
【レビュー対象とした研究の特性】
データベース(PubMed、J DreamⅢ)を用いて、FOSを含む食品を摂取したときの整腸作用に関する論文を検索し、適格基準にもとづき3報(2研究)の論文を採用した。被験者の年齢層は幅広く含まれており、性別も男女ともに含まれていた。1報は日本人を対象としたものであった。全て経口投与によりFOSを含む食品の介入があり、プラセボを対照とし、整腸作用に関するアウトカムを測定していた。
【主な結果】
採用した3報のうち全てで、対照群と比較して有意にビフィズス菌を増やし、1報で有意に排便頻度や便性状を改善するなど、有意な整腸作用を確認した。その有効摂取量はビフィズス菌に関しては2.5g~10g/日、排便頻度および便性状に関しては3g/日であった。したがって、健常人においてFOS(3g/日)の摂取は、善玉菌であるビフィズス菌を増やすことで排便頻度や便性状を改善し整腸作用を示すことが確認された。
【科学的根拠の質】
採用した論文全てでランダム化が確認されたが、割り付けの隠蔵に関する明確な記載はみられなかった。1報の文献で盲検性についての明確な記載がみられなかったが、採用した文献は全てITT解析であり、全体としてバイアスリスクの問題はないと判断した。出版バイアスは検討していない。採用された文献は3報中1報が日本人を対象としたものであり、残りの2報(1研究)に関しても適格基準に合致していたため、日本人への外挿性は問題ないと判断した。また、被験者の年齢層は幅広く含まれており、性別も男女ともに含まれていることから非直接性に問題はないと判断した。採用した文献全てにおいてビフィズス菌を増やし1報で排便頻度や便性状を改善するなど整腸作用が確認できたため、非一貫性に問題はないと判断した。全ての論文において利益相反は確認できなかった。
【表題】
フラクトオリゴ糖を含む食品のカルシウム吸収促進作用
【背景】
骨は、カラダの中の全カルシウム量の99%を含有する。カルシウム不足は骨形成不全や骨粗鬆症といった骨障害の一因となる。それにも関わらず、日本人のカルシウム摂取は未だに十分とは言えない。さらに最近、カルシウムはその摂取量だけなく、摂取したカルシウムの吸収性も重要であることが指摘されている。
【目的】
フラクトオリゴ糖(FOS)が摂取したカルシウムの吸収を促進させるかについて、システマティック・レビュー(SR)の手法に基づいて評価した。
【方法】
データベース(PubMed、The Cochrane Library、医中誌Web)を用いて、フラクトオリゴ糖を摂取したときのカルシウム吸収促進作用に関する論文を収集して、機能性を検証した。
【結果】
フラクトオリゴ糖を含む食品を摂取したときのカルシウム吸収促進作用に関する4報の論文を採用した。4報中3報でカルシウム吸収に関する評価指標において、対照群と比較して有意な整腸作用を確認した。その有効摂取量は1.9g~10g/日であった。有意なカルシウム吸収促進作用がみられなかった1報についても、有意傾向がみられていた。
尚、今回評価した全ての論文については、査読の有無や試験デザインの質という観点から本目的に適合していると判断した。
【結論】
健常人において、フラクトオリゴ糖(FOS)1.9g~10g/日の摂取はカルシウム吸収を有意に促進することが確認された。よって、フラクトオリゴ糖(FOS)はカルシウム吸収促進する機能を有すると判断した。 |