標題
機能性関与成分 GABA による肌弾力への機能性に関する研究レビュー
目的
GABAの摂取による肌弾力への影響を調べるためにリサーチクエスチョンを「(P)健康な成人男女が」、「(I)GABA含有食品を摂取することは」、「(C)プラセボを摂取する場合と比較して」、「(O)肌の弾力維持に役立つか」と設定して、研究レビューを実施した。
背景
精神的・身体的ストレスや不規則な食事が肌の状態に影響を与えることが報告されている1、2)。弾性線維は、真皮組織の主成分であり、その伸縮性を担っている。加齢や紫外線などの影響によって弾性線維の劣化が生じることが広く知られている。弾性線維の低下による真皮層の菲薄化は、さらに皮膚の脆弱性(スキン-テア)に繋がると考えられる。平成30年度診療報酬改定にあたり、褥瘡の危険因子に皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)が加えられ、皮膚の脆弱性を予防するための栄養食品の重要性が高まっている3)。これらの予防・維持・改善に役立つ食品を開発することは、国民の健康的な生活維持にきわめて重要である。
GABAは、中枢神経系では抑制性神経伝達物質として知られており、中枢神経系以外にも様々な非神経組織に存在し、その組織特有の生理機能を有していると考えられている。ヒト正常真皮線維芽細胞を用いた試験で、GABA存在下でコラーゲン、エラスチン等の弾性線維の合成が亢進すること4、5)や、ラットを用いた試験で傷にGABAを外用することで、傷の修復が早まること6)も報告されている。
本研究レビューでは、「肌の弾性」を評価指標として用い、GABA経口摂取群とプラセボ摂取群で比較している文献を網羅的に検索し、GABAの機能性について検討した。
レビュー対象とした研究の特性
検索データベースはPubMed、CiNii、メディカルオンラインとし、メタアナリシス(MA)、シスマティックレビュー(SR)、無作為化コントロール比較試験(RCT)、準RCTを対象に検索を行った。採用文献は、Minds診療ガイドライン作成の手引き2014(福井次矢・山口直人監修、医学書院)に基づき、各論文と研究全体でのバイアス・リスク、直接性、評価項目である肌の弾力について、エビデンスの質、強さ等を評価した。
主な結果
採用文献1報は、ストレスによる肌荒れを自覚し、肌が乾燥している健常成人女性に、GABA 100 mg/日、あるいはプラセボを8週間摂取させ、肌状態を評価した。試験開始時から外的要因により、GABA摂取群とプラセボ摂取群は皮膚水分量が同様に減少していたが、肌弾力性指標は、摂取8週後のGABA摂取群において、プラセボ群と比較して有意に高い状態を維持していた。このことから、GABA摂取は肌の弾力を維持し、肌の健康を守るのを助ける機能があることが示された。
科学的根拠の質
採用文献が1報であるため、出版バイアスは否定できない。また、肌弾力を測定した部位が頬のみであるので、さらなるデータの蓄積が望まれる。ただし、採用文献はランダム化二重盲検プラセボ対象並行群間比較試験の査読付き論文であり、評価指標も国内外でよく用いられており、科学的根拠の質は問題ないと判断した。
1)田中陽和ら、大学生の肌の状態と食事摂取状況及び日常生活との関連、秋田県母性衛生学会雑誌32 : 45-49, 2018
2)相生章博ら、心理的ストレスが皮膚防御機能に及ぼす影響―過密ストレス負荷マウスモデルを用いた検討.和歌山医学, 53, 113-120 (2002)
3)平成30年度(2018年度)診療報酬・介護報酬改定、褥瘡関連項目に関する指針、一般社団法人日本褥瘡学会編集
4)Uehara E, et al. Effects of GABA on the expression of type I collagengene in normal human dermal fibroblasts. Biosci Biotechnol Biochem,81, 376-37 (2017)
5)Uehara E, et al. GABA promotes elastin synthesis and elastin fiberformation in normal human dermal fibroblasts (HDFs), Biosci BiotechnolBiochem, 81, 1198-1205 (2017)
6)Han D, et al. Wound healing activity of gamma-aminobutyric acid(GABA) in rats. J Microbiol Biotechnol, 17, 1661-1669 (2007) |