<肌の乾燥が気になる方の肌の弾力を維持し、肌の健康を守るのを助ける機能>
【標題】
GABA摂取による肌弾力維持機能に関する研究レビュー
【目的】
健康な成人男女の肌弾力維持に対するGABAの機能性について検証することを目的とした。
【背景】
日々の精神的・身体的ストレスが肌の状態を左右する因子であることが報告されている[1,2,3]。
真皮組織の主成分である弾性線維は、伸び縮みする組織(皮膚・動脈・肺など)に多くあって、その伸縮性を担っている。加齢や紫外線などの影響によって弾性線維の劣化が報告されているが、弾性線維の劣化・断裂は皮膚のたるみだけでなく、動脈中膜硬化や肺気腫の直接原因と考えられている[4]。また弾性線維の低下による真皮層の菲薄化は、皮膚の脆弱性(スキン-テア)に繋がると考えられる。平成30年度診療報酬改定にあたり、褥瘡の危険因子に皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)が加えられ、皮膚の脆弱性を予防するための栄養食品の重要性が高まっている[5]。これらの予防・改善に役立つ食品を開発することは、国民の健康的な生活維持にきわめて重要である。
【レビュー対象とした研究の特性】
英語、日本語のデータベースを検索・精査した結果、健康な成人を対象とし、GABAとプラセボを比較した試験であり、肌の弾性を評価している1報を採用し、評価した。
【主な結果】
採用文献は、健康女性に対して、乾燥する時期に、肌弾力へのGABA 摂取(100 mg/日)の効果を調査しており、GABA摂取群はプラセボ摂取群に比べて肌弾力低下が有意に緩和された(P<0.05)ことを報告している。肌弾力に関連する肌の構造は全身で共通であり、性差もないことから、GABAは肌の弾力を維持し、肌の健康を守るのを助ける機能があると評価した。
【科学的根拠の質】
採用文献が1報であるため出版バイアスは否定できず、肌弾力を測定した部位が頬のみであることから、今後さらなるエビデンスの蓄積が望まれる。しかし、採用文献はランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験の査読付き論文であり、評価指標も国内外において広く用いられている手法であることから、科学的根拠の質は問題ないと判断した。
【参考文献】
[1] 針谷毅ら.アレルギー, 49, 463-471 (2000)
[2] 相生章博ら.和歌山医学, 53, 113-120 (2002)
[3] 佐藤育子ら.月刊ナーシング, 26, 98-103 (2006)
[4] 福田悠.弾性線維と疾患.Connective Tissue, 24, 135-140 (1992)
[5] 2018年1月24日 中央社会保険医療協議会 総会 第386回議事録(厚生労働省HPより)
<仕事や勉強などによる一時的な精神的ストレスや疲労感を緩和する機能>
【標題】
GABAの、デスクワークなどの精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感の緩和効果に関する研究レビュー
【目的】
健康な成人日本人男女がGABAを含む食品を摂取した場合と、GABAを含まない食品(プラセボ)を摂取した場合で、デスクワークなどの精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感の緩和効果に違いがあるかどうかを検証することを目的とした。
【背景】
GABAのデスクワークなどを主体とする精神負荷作業における疲労感の緩和について、個々の文献では報告されているものの、それらを網羅的に評価された文献はなかった。そこでGABAの、精神的ストレスがかかる作業後の疲労感を緩和する機能性について検証するため、本研究レビューを行った。
【レビュー対象とした研究の特性】
外国語文献検索には、PubMed(1946年~2016年)、英語文献検索には、The Cochrane Library(1992年~2016年)のデータベースを用い2016年7月1日に検索を実施した。日本語文献は、医中誌Web(1977年~2016年)、J-DreamⅢ(1975年(医学情報は1981年)~2016年)のデータベースを用い2016年7月3日に検索を実施した。文献を精査し、健常な日本人成人を対象とし、GABAを摂取しない群と比較した試験デザインである7報の文献を評価した。利益相反に関して、申告がない論文もあったが特に問題となるものはなかった。
【主な結果】
主観的疲労感(精神的ストレス)としてVASおよびPOMS、唾液中のコルチゾールおよびクロモグラニンA、さらに、脳波の変動、自律神経活動の各指標により精神的ストレスや疲労感を評価した。これらの指標は一時的な精神的ストレスや疲労感を評価する指標として広く用いられ、表示しようとする機能性を評価するのに適した指標である。結果は、28~100mgのGABAを摂取することで、GABAを摂取しない時と比較して、勉強や仕事などによる一時的な精神的ストレスや疲労感を緩和する効果が確認された。なお、GABAの摂取による副作用などの有害事象の記載はみられなかった。
【科学的根拠の質】
最終調査対象とした論文のバイアス・リスクの評価では、採用論文7報中1報が中程度であり、他の6報は低度であった。エビデンスの一貫性など特に問題は認められず、科学的根拠の質は高いと考えられる。本レビューの限界として、報告数、被験者数ともに少ないことから、バイアスの存在が完全に否定できないことが考えられる。
<睡眠の質(眠りの深さ)の向上に役立つ機能>
【標題】
GABA摂取による睡眠の質改善機能に関する研究レビュー
【目的】
健康な成人男女がGABAを含む食品を摂取した場合と、GABAを含まない食品(プラセボ)を摂取した場合で、日常生活における睡眠の質(眠りの深さ)に対する効果に違いがあるかどうかを検証することを目的とした。
【背景】
ストレスは、ヒトの睡眠に様々な影響を及ぼすことが知られている。主観的ストレス、緊張感や不安が多い人に睡眠問題の有症率が高く、ストレスが高いことやストレスにうまく対処できないことは不眠症のリスクを高めてしまう。一時的および日常的なストレスを緩和することは、睡眠に関する諸問題の解決に有効であると考えられる。GABA摂取により、精神的ストレスがかかる作業における一時的な疲労感を軽減することや、睡眠の質を改善することが報告されている。
本研究レビューでは、GABA摂取による日常生活における睡眠の質(眠りの深さ)を改善する効果について、網羅的に検索し、機能性について検討した。なお、睡眠の質(眠りの深さ)の評価方法として、当該分野において学術的に広くコンセンサスが得られている客観的評価法(脳波計)を用いている文献のみを採用した。
【レビュー対象とした研究の特性】
英語、日本語の医学論文データベースを検索し、精査をした結果、健康な成人男女を対象とし、GABA摂取時とプラセボ摂取時を比較した試験デザインであり、脳波(ノンレム睡眠時間)を評価している文献として、2報を採用し評価した。
【主な結果】
健康な成人男女に対するGABA摂取(100 mg/日)の効果として、採用文献2報で、深い睡眠時間の有意な増加(p<0.05)を示している。また1報では、ストレス状況や疲労感の違いによる層別解析を実施した場合に、一時的な疲労感やストレスをより強く感じている人のノンレム睡眠ステージ3(最も深い眠り)の時間が、GABA摂取時はプラセボ摂取時と比較して有意に増加した。被験者はいずれも健常な範囲の人であることから、GABAは、健康な成人男女において、睡眠の質(眠りの深さ)を向上させる機能を発揮すると評価した。
【科学的根拠の質】
論文のバイアスリスクの評価では、採用論文は低度であった。調査対象とした論文は査読を実施したRCT論文で、客観的評価指標である脳波であるため、科学的根拠の質は高いと考えられる。本レビューの限界として、論文数が少ないこと、バイアスリスクが完全に否定できなかったことが挙げられる。 |