1.食事から摂取した脂肪の吸収を抑える機能
(ア)標題
難消化性デキストリン(食物繊維)を用いた健常成人に対する脂肪の吸収抑制作用に関する研究レビュー(メタアナリシス)
(イ)目的
健常成人及び血中中性脂肪がやや高めの成人(空腹時血中中性脂肪値が200 mg/dL未満)における難消化性デキストリン(食物繊維)の単回摂取がプラセボの単回摂取と比較して、脂肪の吸収を抑制する機能を有するか検証した。
(ウ)背景
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数が増加している。脂質異常症は動脈硬化の危険因子であることから、食生活の改善等による一次予防が望まれている。さらに、近年、脂質異常症の1つとして食後に血中中性脂肪値の高い状態が長時間継続する食後高脂血症が、動脈硬化症や冠動脈疾患の発症を早めるリスク因子であることが明らかとなってきた。トウモロコシでん粉から作られる水溶性食物繊維である難消化性デキストリンは、様々な食品に利用されており、ヒトで食事から摂取した脂肪の吸収を抑制して食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用を有することが報告されている。そこで、健常成人に対して難消化性デキストリンの単回摂取が脂肪の吸収を抑制する機能を有するか検証した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
2019年7月2日までに公表された国内外の文献に関して、電子データベースを用いて調査を実施した。難消化性デキストリンの単回摂取がプラセボの単回摂取と比較し、脂肪の吸収を抑制する機能を有するかを検証するため、ランダム化比較試験を検索したところ、条件を満たした文献は9報であった。対象者は健常成人及び血中中性脂肪がやや高めの成人(空腹時血中中性脂肪値が 200 mg/dL未満)とした。
(オ)主な結果
採用論文9報において、難消化性デキストリンの単回摂取は、プラセボの単回摂取と比較して血中中性脂肪曲線下面積(AUC0-6hr)を有意に低下させることが確認された。AUC0-6hrは脂肪の吸収の程度を反映することから、難消化性デキストリンは食事由来の脂肪の吸収を抑えると考えられる。なお、正常域者のみにおいても同様の効果が確認された。また、難消化性デキストリン(食物繊維)の推奨1回摂取量は5gと評価された。
(カ)科学的根拠の質
バイアスリスクおよび非直接性は低かった。アウトカムの総例数は486例と例数が多く、不精確性はないと判断した。非一貫性は低かった。出版バイアスの存在は否定されなかったがその影響は小さいと判断した。また、採用論文は独立した複数の施設で実施された報告であったため、その他のバイアスは低いと判断した。以上のことから、エビデンスの強さをA(強い)と判断した。ただし、未報告研究の存在や出版バイアスの可能性が否定出来ないため、引き続き検証する必要がある。
2.食事から摂取した糖質の吸収を抑えて血糖値の上昇を抑える機能
(ア)標題
難消化性デキストリン(食物繊維)を用いた健常成人に対する食後血糖値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
(イ)目的
健常成人(空腹時血糖値が126 mg/dL未満)における難消化性デキストリン(食物繊維)の摂取が、食後血糖値の上昇抑制作用を有するか検証した。
(ウ)背景
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数が増加している。その中でも、糖尿病患者数の増加は、超高齢社会を迎えた日本において極めて深刻な問題のひとつとなっている。糖尿病に罹患しないためには、食事療法などにより食後血糖値をコントロールすることが非常に重要である。トウモロコシでん粉から作られる水溶性食物繊維である難消化性デキストリンは、様々な食品に利用されている。食事療法では、食物繊維の摂取による2型糖尿病の発症リスク改善効果が報告されており、血糖値調節効果が期待される。そこで、健常成人に対して難消化性デキストリンの摂取が、食後血糖値の上昇抑制作用を有するか検証した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
2015年1月5日までに公表された国内外の文献に関して、電子データベースを用いて調査を実施した。難消化性デキストリンの摂取が、食後血糖値の上昇抑制作用を有するか検証するため、ランダム化比較試験を検索したところ、条件を満たした文献は43報であった。対象者は健常成人(空腹時血糖値が126 mg/dL未満)とした。
(オ)主な結果
採用論文43報の統計解析の結果、「食後血糖値30分」「食後血糖値60分」「食後血糖値の濃度曲線下面積(AUC0-120min)」3つ全ての評価項目において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群の食後血糖値が有意に低下したことが確認された。また、難消化性デキストリン(食物繊維)の推奨1回摂取量は5gと評価された。
(カ)科学的根拠の質
バイアスリスクは単盲検や脱落例があるため「中」とした。PICOとの不一致は無く、非直接性はなかった。アウトカムの総例数も多く、不精確性はないと判断した。研究官の異質性はなく、非一貫性はなかった。公表バイアスの存在は否定されなかったが、未公表論文を想定しても統合効果量が有意であったため、影響は小さいと判断した。以上のことから、エビデンスの強さをA(強い)と判断した。ただし、システマティックレビューの結果が変わる可能性や、運動療法やその他生活習慣による影響が考えられるため、継続した調査・研究が必要である。 |