<注意力の精度の向上効果>
(ア)標題
熟成ホップ由来苦味酸の注意力(分配性注意・注意の変換・注意による認知機能の制御)※1の精度向上効果に関する調査
※1:知的活動において、他の情報に対する反応を制御したり、2つ以上の必要な情報へ同時に意識を向けたりすること。
(イ)目的
健常な中高齢者が熟成ホップ由来苦味酸を含む食品を摂取した場合、含まない食品を摂取した場合と比較して注意力(分配性注意・注意の変換・注意による認知機能の制御)の精度が向上するか検証することを目的とした。
(ウ)背景
熟成ホップ由来苦味酸は、注意力の精度を向上させることがヒト試験で報告されている。しかし、熟成ホップ由来苦味酸のヒトに対する当該効果を総合的に評価した文献が存在しなかったため、その有効性については明確ではなかった。そこで、注意力の中でも、健康な日常生活を営む上で重要な能力の一つとされる「分配性注意・注意の変換・注意による認知機能の制御」に着目し、健常な中高齢者に対する熟成ホップ由来苦味酸の当該効果に関する研究論文等を集め、当該効果を総合的に評価した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
5つのデータベースを用い、2021年2月26日までに公表された文献またはヒト試験を検索した。その結果、レビュー対象となる文献が2報得られた。1日35 mgの熟成ホップ由来苦味酸を含む食品摂取群(熟成ホップ由来苦味酸群)と含まない食品摂取群(プラセボ群)の2群を設けて12週間継続摂取させて効果を比較する試験方法で実施されていた。対象者は認知機能の低下を自覚する健常な中高齢者であった。注意力(分配性注意・注意の変換・注意による認知機能の制御)は、当該分野において学術的に広く認められている方法によって客観的に評価されていた。利益相反については適切に記載されていた。
(オ)主な結果
対象文献2報のうち1報では、熟成ホップ由来苦味酸を含む食品を摂取した群で、含まない食品を摂取した群よりも摂取開始後12週で注意力の指標の一つであるStroopの成績が有意に向上した。もう1報では、熟成ホップ由来苦味酸を含む食品を摂取した群で、含まない食品を摂取した群よりも摂取開始後12週で注意力の指標の一つであるSDMTの成績が有意に向上した。
(カ)科学的根拠の質
調査の対象となった文献2報は、いずれも研究の質が高く、いずれの文献においても熟成ホップ由来苦味酸による有意な注意力(分配性注意・注意の変換・注意による認知機能の制御)の向上が認められた。よって、健常な中高齢者に対する熟成ホップ由来苦味酸摂取の機能性について示唆的な根拠があると判断した。限界として採用文献が2報と少なく、そのいずれもが同じ研究グループから報告されている点が挙げられるため、更なる臨床研究での検証が望まれる。
<体脂肪低減効果>
(ア)標題
熟成ホップ由来苦味酸の体脂肪低減効果に関する調査
(イ)目的
健常者が熟成ホップ由来苦味酸を含む食品を摂取した場合、含まない食品を摂取した場合と比較して体脂肪が低減するか検証することを目的とした。
(ウ)背景
熟成ホップ由来苦味酸は、体脂肪を低減することがヒト試験で報告されている。しかし、熟成ホップ由来苦味酸のヒトに対する当該効果を総合的に評価した文献が存在しなかったため、その有効性については明確ではなかった。そこで、健常者に対する熟成ホップ由来苦味酸の体脂肪低減効果に関する研究論文等を集め、当該効果を総合的に評価した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
5つのデータベースを用い、2021年2月26日までに公表された文献またはヒト試験を検索した。その結果、レビュー対象となる文献が3報得られた。1日11.7 mg、35 mg、または70 mgの熟成ホップ由来苦味酸を含む食品摂取群(熟成ホップ由来苦味酸群)と含まない食品摂取群(プラセボ群)の2群を設けて12週間継続摂取させて効果を比較する試験方法で実施されていた。対象者はBMI 25 kg/m2以上30 kg/m2未満の健常な成人男女であった。体脂肪は、腹部CTスキャンによる総脂肪面積(内臓脂肪面積と皮下脂肪面積の合計)で評価されていた。利益相反については適切に記載されていた。
(オ)主な結果
3報を統合して評価した結果、肥満症の者を含む全被験者を対象とした場合、熟成ホップ由来苦味酸11.7 mg以上を含む食品を摂取した群で、含まない食品を摂取した群よりも摂取開始後12週で体脂肪が有意に減少した。健常者のみを対象とした場合は、熟成ホップ由来苦味酸35 mg以上を含む食品を摂取した群で、含まない食品を摂取した群よりも摂取開始後12週で体脂肪が有意に減少した。
(カ)科学的根拠の質
全被験者、健常者のみを対象とした場合のいずれでも、本レビューで採用した研究は、研究の質に重度な問題は認められず、各研究を統合して評価した結果、1日35 mg以上の熟成ホップ由来苦味酸の摂取により腹部の体脂肪が有意に低減することが示された。よって、健常者に対する熟成ホップ由来苦味酸摂取の機能性について示唆的な根拠があると判断した。ただし、採用文献が同じ研究グループから報告されている点、被験者がBMI 25 kg/m2以上30 kg/m2未満の健常な成人男女に限定されている点に限界があると考える。 |