【標題】
難消化性デキストリンの血糖値上昇抑制機能、血中中性脂肪上昇抑制機能、及び整腸効果に関する研究レビュー
【目的】
成人健常者男女が難消化性デキストリンを含む食品を摂取した時の下記効果を検証する事を目的とする。
① 食後の血中中性脂肪上昇抑制
② 食後の血糖値上昇抑制
③ 整腸効果(おなかの調子を整え便通改善作用)
研究レビューにより、成人健常者男女を対象とし、難消化性デキストリンを含む食品を摂取した時と難消化性デキストリンを含まない食品(プラセボ)を摂取した時の効果を比較している文献を調査し、効果の科学的根拠の評価を行った。
【背景】
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、メタボリックシンドロームを初めとした生活習慣病の患者数が増加している。食生活を見直す事が注目視される中で、食物繊維の重要性が認識されているが、「平成24年国民健康・栄養調査報告」によると食物繊維の摂取不足が推測されている。難消化性デキストリンは食物繊維の補足として特定保健用食品にも使用されている。難消化性デキストリンには食後の血中中性脂肪の上昇抑制作用、食後の血糖値の上昇抑制作用、整腸作用(便通改善作用)が報告されており、健康維持に役立つと考えられる。よって、難消化性デキストリン(食物繊維)の①食後の血中中性脂肪の上昇抑制作用、②食後血糖値の上昇抑制作用、③整腸作用(おなかの調子を整え便通改善作用)について研究レビューにて検証した。
【レビュー対象とした研究の特性】
①食後の血中中性脂肪の上昇抑制作用
PubMed、Cochrane Library、医中誌Web、CiNii Articlesの4つの文献検索電子データベースを用いて、成人健常者(空腹時血中中性脂肪値やや高めの方を含む)を対象に難消化性デキストリン摂取時の食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用についてランダム化比較試験(RCT)で研究している論文を抽出し、その効果についてメタアナリシスにて検討した。
②食後の血糖値の上昇抑制作用
PubMed、Cochrane Library、医中誌Web、CiNii Articlesの4つの文献検索電子データベースを用いて、成人健常者(空腹時血糖値126mg/dL未満)を対象に難消化性デキストリン摂取時の食後血糖値の上昇抑制作用についてRCTで研究している文献を抽出し、その効果についてメタアナリシスにて検討した。
③整腸作用(おなかの調子を整え便通改善作用)
PubMed、Cochrane Library、医中誌Web、CiNii Articlesの4つの文献検索電子データベースを用いて、健常成人あるいは便秘傾向の成人を対象に難消化性デキストリン摂取時の整腸作用(便通改善作用)についてRCTで研究している文献を抽出し、その効果についてメタアナリシスにて検討した。
【主な結果】
①食後の血中中性脂肪の上昇抑制作用
9報の研究論文が採用され、メタアナリシスにて解析の結果、「食後の血中中性脂肪値(2,3,4時間)」「血中濃度曲線下面積(AUC0-6h)」において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群は有意な食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用が認められ、難消化性デキストリン(食物繊維)5 gを摂取することによって、食後の血中中性脂肪値の上昇抑制作用が期待できることが示された。
②食後血糖値の上昇抑制作用
43報の研究論文が採用され、メタアナリシスにて解析の結果、「食後血糖値30分」「食後血糖値60分」「食後血糖値の濃度曲線下面積(AUC0-120min)」において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群は有意な食後血糖値の上昇抑制作用が認められ、さらに、難消化性デキストリン(食物繊維)5 gを摂取することによって、食後の血糖値の上昇抑制作用が期待できることが示された。
③整腸作用(おなかの調子を整え便通改善作用)
26報の研究論文が採用され、メタアナリシスにて解析の結果、「排便回数」「排便量」において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群は有意な便通改善作用が認められ、さらに、難消化性デキストリン(食物繊維)5 gを摂取することによって、整腸作用(便通改善作用)が期待できることが示された。
【科学的根拠の質】
各研究レビューでは、信頼性の高いランダム化比較試験(RCT)の研究論文を採用しており、メタアナリシスにて検討した結果、各アウトカムにおいて肯定的な効果が得られている。各アウトカムの総例数は多く不精確性は低いと判断され、一貫性があり、また、公表バイアスの存在は否定されなかったが未公表論文を想定してもその影響は小さいと判断された。したがって、各レビューの結果から、難消化性デキストリン(食物繊維)の摂取より①食後の血中中性脂肪の上昇抑制作用、②食後の血糖値の上昇抑制作用、③整腸作用(おなかの調子を整え便通改善作用)について十分な科学的根拠があると考えられた。
研究レビューの限界としては、今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続した調査が必要である。また、食事療法だけでなく、運動療法、その他生活習慣などとの交絡因子の影響について、継続した研究が必要と考えられる。 |