乳酸菌CP1563株由来の10-ヒドロキシオクタデカン酸(10-HOA)及びマルトビオン酸の機能性評価を以下の通り実施しました。
1.体脂肪、内臓脂肪を減らす機能について
(ア)標題
乳酸菌CP1563株由来10-ヒドロキシオクタデカン酸(10-HOA)の体脂肪、内臓脂肪減少に関する研究レビュー
(イ)目的
健常な成人における乳酸菌CP1563株由来10-HOAの摂取が、体脂肪、内臓脂肪低減に有効であるかを明らかにすることを目的とした。
(ウ)背景
これまでの研究により、乳酸菌CP1563株由来の10-HOAが脂質代謝に関与する分子PPARα (ペルオキシソーム因子活性化受容体)を活性化し、脂質代謝改善作用を示すことを見出した。しかし、当該成分について網羅的に調査した研究レビューは確認できなかったため、今回研究レビューを実施することした。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
国内外の文献検索の結果、2論文を採用し、体脂肪、内臓脂肪に関する検査項目を効果指標として定性的研究レビューを実施した。有効性の判断は、乳酸菌CP1563株由来10-HOAの摂取群とプラセボ群との比較で、統計的有意差(p<0.05)があった場合に有効性ありと判断した。
(オ)主な結果
BMIが23以上30未満の健常者200名を対象にしたプラセボ対照二重盲検無作為化比較試験で、乳酸菌CP1563株由来10-HOAを1.44mg配合した飲料を18週間にわたって摂取た結果、プラセボに比して有意に内臓脂肪面積と総脂肪面積が減少することが示された。また、メタボリックシンドロームではなく肥満も伴わない症例(BMIが25未満)の層別解析でも、CP1563株由来の10-HOAの摂取群ではプラセボ群と比較して、内臓脂肪面積、総脂肪面積、体重、BMI、Apo B/ Apo A-1比が有意に減少し、Apo-A1が有意に増加することが見出された。加えて、BMI25以上30未満の肥満気味な健常人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検群間比較試験でも、CP1563株由来の10-HOA を12週間摂取することで、プラセボに比して内臓脂肪面積やBMIが低下することが示された。。
(カ)科学的根拠の質
採用文献は、バイアスリスクの評価で中/疑い(-1)が2項目あったが、リサーチクエスチョンに適合した質の高い文献であった。ただし、UMIN-CTRの活用が進んでいないことから、出版バイアスの可能性は否定できず、また、研究者に製造企業が含まれているため、エビデンス総体としてのバイアスリスクの可能性は否定できない。
2.おなかの調子を整える機能について
(ア)標題
「マルトビオン酸」の便通改善に関する研究レビュー
(イ)目的
便秘傾向の健常成人を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、便通改善を示すかを検証することを目的とした。
(ウ)背景
マルトビオン酸(4-О-α-D-グルコピラノシル-D-グルコン酸)は、分子内に複数の水酸基と一個のカルボキシ基を有しており、カルシウムなどのミネラル塩の可溶化安定性に優れた性質を持つ難消化性の二糖類である。マルトビオン酸の構成糖であるグルコン酸はビフィズス菌などの腸内細菌に利用され腸内環境を改善することが報告されており、またマルトビオン酸Caを4週間摂取させたラットを用いた試験では、盲腸内容物重量の増加や、酢酸、プロピオン酸やn-酪酸などの短鎖脂肪酸の増加が確認されていることから、腸内環境を整える機能が期待された。よって、「便秘傾向の健常成人に対してマルトビオン酸の経口摂取が便通改善に寄与するか。」を検証することとした。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
便秘傾向の健常成人を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、プラセボと比較して、便通改善を示すかを検証した研究を検索した。国内外の文献データベース等を用いて検索を行った結果、条件を満たしたRCT 研究は3件であった。有効性の判断は、マルトビオン酸の摂取群とプラセボ群との比較で、統計的有意差(p<0.05)があった場合に有効性ありと判断した。
(オ)主な結果
本研究レビューで採用されたRCT 研究3件はいずれも日本で実施され、便秘傾向の健常成人女性に対して、1日あたりマルトビオン酸0.8~2.42gを含む食品を継続摂取することで、排便日数や排便量、日本語版便秘評価尺度やブリストスケールなどに関して、有意な改善が認められた。
(カ)科学的根拠の質
本研究レビューで採用されたRCT 研究は、いずれも日本人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、便通改善に関して一貫性があることから信頼性は高いと考えられる。しかし、採用した2報3試験とも対象者が40~69歳女性であった。マルトビオン酸によりおなかの調子を整えるメカニズムは、年齢や男女において差異はないと考えられることから、他年齢や男性への外挿も可能であると判断したが、今後更なるエビデンスの蓄積が望まれる。 |