1. 血糖値上昇抑制効果
(ア)標題
難消化性デキストリンの食後血糖の上昇抑制作用に関する検証
(イ)目的
20歳以上の健常者に 難消化性デキストリンを配合した食品を摂取した場合と、難消化性デキストリンを含んでいない食品(プラセボ食品)を摂取した場合を比べ、食後の血糖値上昇抑制効果があるか否かを 健常成人を対象としたランダム化比較試験(Rendomized Controlled Trial)のシステマティックレビューを行い、その有効性を確認した。
(ウ)背景
現在、食生活の欧米化、慢性的な運動不足などにより、我が国における生活習慣病の患者数が増加している。その中でも、糖尿病患者数の増加は、高齢者社会を迎える日本において極めて深刻な問題の一つとなっている。
糖尿病に罹患しないためには、食事療法などにより血糖値をコントロールすることが非常に重要であるが、特に、食後血糖値は糖尿病に関する指標として注目されている。食事療法の中で、食物繊維の摂取による2型糖尿病の発症リスクの改善効果が報告されており、食物繊維が有する血糖調節効果が期待されている。そこで今回、食物繊維のなかでも、特定保健用食品の「血糖値が気になる方に適した食品」に広く使用されている機能性素材「難消化性デキストリン」による食後血糖の上昇抑制作用を確認した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
検索日:
日本国内の文献 2014年12月25日
海外の文献 2015年1月5日
検索対象期間:検索日までの全ての期間
対象集団の特性: 20歳以上の疾病に罹患していない、もしくは境界域の者 (妊娠している もしくは授乳中の女性は除く。)
最終的に評価した論文数: 43編
研究デザイン: 難消化性デキストリンの食後血糖の上昇抑制作用について、対照群を用いて盲検化されたランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)によって検証されている原著論文を対象とした。
利益相反情報: 原料供給メーカーである松谷化学工業株式会社より依頼を受けた、株式会社薬事法マーケティング事務所にて実施した。
(オ)主な結果
食後30分、60分の血糖値 および 血中濃度曲線下面積の3つの評価項目において、対照食品群と比較して 難消化性デキストリンを摂取した群では有意に値が減少していた。
(カ)科学的根拠の質
採択された論文について 以下の6つの項目において研究の質を以下の項目につき、“Low risk”、“High risk”、“Unclear risk”の3段階に分けて評価した。
A 割り付けの順番の作成(Random Sequence generation)
B 割り付けの隠蔽(Allocation concealment)
C 参加者、職員、効果評価者の盲検(Blinding of participants and Personnel)
D 不完全なアウトカムデータ(Incomplete outcome date)
E 選択的なアウトカムの報告(Selective reporting)
F その他のバイアス(Other bias)
評価の結果、全ての研究において、各項目の評価は“Low risk”もしくは“Unclear risk”に該当した。すべての研究において、研究の質が低い“High risk”に該当する項目はなかったため、今回評価した論文の科学的根拠の質は確保されていると判断した。
今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続した調査が必要である。また、食事療法だけでなく、運動療法、その他生活習慣などとの交絡因子の影響について、さらなる研究が必要と考えられる。
2. 整腸作用
(ア)標題
難消化性デキストリンの整腸作用・便通改善作用の検証
(イ)目的
20歳以上の健常者に 難消化性デキストリンを配合した食品を摂取した場合と、難消化性デキストリンを含んでいない食品(プラセボ食品)を摂取した場合を比べ、排便回数と排便量の増加が見られるか否かを 健常成人を対象としたランダム化比較試験(Rendomized Controlled Trial)のシステマティックレビューを行い、その有効性を確認した。
(ウ)背景
現在、食生活の欧米化、慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームを初めとした生活習慣病の患者数が増加している。食物繊維は生活習慣病に対する予防効果があると言われていますが、食物繊維の摂取不足が推測されている。
水溶性食物繊維の一種である難消化性デキストリンは、便通および便性改善作用を持つことが報告されている。便通改善作用に関しては、難消化性デキストリンが消化酵素による加水分解をほとんど受けず、その大部分が大腸に到達することにより、糞便容量を増大するためと推測されている。また、特定保健用食品としても、「整腸作用」の保健の用途で許可を受けている商品が多数存在する。そこで今回、難消化性デキストリンの整腸作用・便通改善作用を確認した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
検索日:
日本国内の文献 2014年12月25日
海外の文献 2015年1月5日
検索対象期間:検索日までの全ての期間
対象集団の特性:20歳以上の疾病に罹患していない者(妊娠している もしくは授乳中の女性は除く。)
最終的に評価した論文数: 25編
研究デザイン: 難消化性デキストリンの整腸作用(便通改善作用)について、対照群を用いて盲検化されたランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)によって検証されている原著論文を対象とした。
利益相反情報:原料供給メーカーである松谷化学工業株式会社より依頼を受けた 株式会社薬事法マーケティング事務所にて実施した。
(オ)主な結果
健常成人において、対照食品群と比較して 難消化性デキストリンの摂取した群では「排便回数」、「排便量」を有意に増加させることが示唆された。
(カ)科学的根拠の質
採択された論文について以下の6つの項目において研究の質を以下の項目につき、“Low risk”、“High risk”、“Unclear risk”の3段階に分けて評価した。
A 割り付けの順番の作成(Random Sequence generation)
B 割り付けの隠蔽(Allocation concealment)
C 参加者、職員、効果評価者の盲検(Blinding of participants and Personnel)
D 不完全なアウトカムデータ(Incomplete outcome date)
E 選択的なアウトカムの報告(Selective reporting)
F その他のバイアス(Other bias)
評価の結果、全ての研究において、各項目の評価は“Low risk”もしくは“Unclear risk”に該当した。すべての研究において、研究の質が低い“High risk”に該当する項目はなかったため、今回評価した論文の科学的根拠の質は確保されていると判断した。
今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続した調査が必要である。また、整腸作用は生活習慣も重要な要因であり、一つの食品だけを摂取すれば問題ないという考えではなく、食生活や運動などにも注意を払う必要がある。適切な整腸作用を継続するうえで必要な要素として、食事療法だけでなく、運動療法、睡眠などの生活習慣などとの交絡因子の影響について、継続した研究が必要と考えられる。 |