当該製品の機能性に関する評価を以下の通り実施した。
(1)イヌリンの血中中性脂肪を下げる機能について
ア)標題
イヌリンの血中中性脂肪低下作用に関する研究レビュー(定性的レビュー)
イ)目的
イヌリンを含む食品を、疾病に罹患していない者または血中中性脂肪値がやや高めの者が摂取することにより、血中中性脂肪値を下げるかを明らかにする。
ウ)背景
イヌリンの血中中性脂肪低下作用については、15報の文献を対象にメタ解析が実施され、血中中性脂肪値の有意な減少が報告されている。しかし、このメタ解析には疾病罹患者を対象とした試験などが含まれていたため、新たに研究レビューを行った。
エ)レビュー対象とした研究の特性
『PubMed』『CENTRAL』『医中誌Web』をデータベースとして文献検索を2017年2月に実施した。検索対象期間は制限せず、言語は英語および日本語とし、対象集団は疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦、授乳婦は除く)または血中中性脂肪値がやや高め(150~199 mg/dL)の者とし、イヌリンを含む食品の摂取による血中中性脂肪値の変化を検討した介入試験を対象に、静岡県産業振興財団フーズサイエンスセンター、フジ日本精糖株式会社、静岡県立大学との共同研究により研究レビューを行った。正常血中中性脂肪値を示す被験者のみを対象とした文献も別途定性評価した。
オ)主な結果
抽出された6報の文献を用いて定性的レビューを行った結果、6報中4報の論文が肯定的であった。正常な血中中性脂肪値を示す被験者のみを対象とした文献は6報中4報で、内2報で正常範囲内で有意な血中中性脂肪低下作用を示し、その他2報では血中中性脂肪値の低下は認められなかった。このことより、正常血中中性脂肪値を示す者がイヌリンを摂取した場合、血中中性脂肪値は正常範囲内に維持されると判断された。
カ)科学的根拠の質
研究デザインの質を評価したところ、6報中4報は研究の質が最も高いレベルと判断した。研究の限界に関して、評価した6文献はいずれも外国人を対象としているが、他の論文と同様の成績であり、日本人への外挿性は問題ないと考えられた。これらから、本研究レビューの科学的根拠の質は確保されていると判断した。
以上、本研究レビューの結果から、イヌリンの血中中性脂肪低下作用には科学的根拠があると判断した。
(2)イヌリンの食後の血糖値の上昇をゆるやかにする機能について
ア)標題
イヌリンの食後血糖値上昇抑制作用に関する研究レビュー(定性的レビュー)
イ)目的
イヌリンを含む食品を、疾病に罹患していない者または空腹時血糖値が境界型の者が単回経口摂取することにより、食後血糖値の上昇をゆるやかにするかを明らかにする。
ウ)背景
イヌリンは穀物、野菜、果物などに多く含まれることが知られている。イヌリンの生理機能性に関しては様々な報告があり、単回経口摂取による食後血糖値の上昇抑制作用についても多数、論文化されている。しかしながら、イヌリンの当該効果に関するシステマティックレビューの報告は確認できなかった。そこで、今回新たに研究レビューを実施した。
エ)レビュー対象とした研究の特性
『PubMed』『CENTRAL』『医中誌Web』をデータベースとして用い文献検索を2017年1月に実施した。検索対象期間は制限せず、言語は英語および日本語とし、対象集団は疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦、授乳婦は除く)または空腹時血糖値が境界型(空腹時血糖値110~125 mg/dL)の者とし、イヌリンを含む食品の単回経口摂取による食後血糖値の上昇抑制作用を検討した介入試験を対象にして、研究レビューを実施した。なお、静岡県産業振興財団 フーズサイエンスセンター、フジ日本精糖株式会社、静岡県立大学との共同研究により実施した。
オ)主な結果
抽出された3報の文献を用いて定性的レビューを行った結果、すべての論文が肯定的であった。その際のイヌリン摂取量は5.2~10.8 gであった。また、これら3報は正常血糖値者を対象とした試験で、上記食後血糖上昇抑制効果は正常血糖値範囲内であったことより、血糖値正常者がイヌリンを摂取した場合には血糖値は正常範囲内に維持されるものと考えられる。
カ)科学的根拠の質
研究デザインの質を評価したところ、3報全てが研究の質が最も高いレベルと判断した。研究の限界に関しては、評価した3報のいずれも小規模の試験であることや出版バイアスなどについて研究の限界が考えられるものの、その他の要因を含め、重大な影響ではないと判断した。これらのことから、本研究レビューの科学的根拠の質は確保されていると判断した。
以上、本研究レビューの結果から、イヌリンの食後血糖値上昇抑制作用には科学的根拠があると判断した。
(3)イヌリンの善玉菌として知られているビフィズス菌を増やすことで、お腹の調子を整える機能について
ア)標題
イヌリンの整腸効果に関する研究レビュー(定性的レビュー)
イ)目的
イヌリンの整腸効果について明らかにする。
ウ)背景
イヌリンは腸内でビフィズス菌を増やして腸内フローラを良好に保つことが知られている。しかし、イヌリンのみを摂取したときの整腸効果に関する多くの研究をまとめたものがなく、本研究レビューを行った。
エ)レビュー対象とした研究の特性
論文の検索日:2015年8月10日(PubMed、医中誌)、2015年8月11日(CENTRAL)
検索対象期間:全期間(2015年まで)
対象集団の特性:健常者(未成年者、妊産婦、授乳婦を除く)および疾病に罹患していない者
最終的に評価した論文数:17報
本研究レビューは静岡県産業振興財団 フーズサイエンスセンター、フジ日本精糖株式会社、静岡県立大学との共同研究により行った。
オ)主な結果
イヌリンの整腸効果については、糞便中ビフィズス菌数に関しては14報18試験のうち15試験で有意に増加し、2試験で増加傾向、1試験で減少傾向であった。糞便中乳酸菌数に関しては9報13試験のうち5試験で有意に増加し、4試験で増加傾向、4試験で減少傾向または差なしであった。排便回数に関しては7報10試験のうち2試験で排便回数が有意に増加し、4試験で増加傾向、4試験で減少傾向または差なしであった。排便量に関しては6報7試験のうち2試験で排便量が有意に増加し、4試験で増加傾向、1試験で減少傾向であった。
カ)科学的根拠の質
評価した全ての論文の試験方法等が、整腸効果を調査する目的に適合していた。正確性の観点から研究デザインの質を評価したところ、最も質が高いレベルと判断できた論文は17報中11報であった。採用された論文において、試験デザインや結果の妥当性、各研究間の一貫性等を検討した結果、大きな問題はなく、科学的根拠の質は高いと評価された。なお、日本人を対象とした論文は1報しかなかったが、他の論文と同様の成績であり、日本人への外挿性に関しては問題ないと考えられる。これらのことから、今回評価した論文全体を通して、科学的根拠の質は確保されていると評価した。
以上、本研究レビューの結果から、イヌリンの整腸効果について科学的根拠があると判断した。 |