①標題:
難消化性デキストリン(以下、「難デキ」と記載)を用いた食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用、食後血糖値の上昇抑制作用、整腸作用(便通改善作用)に関する検証
②目的:
難デキを摂取することにより、下記作用の科学的根拠を検証することを目的とした。
A:食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用
B:食後血糖値の上昇抑制作用
C:整腸作用(便通改善作用)
【対象者 A:空腹時血中中性脂肪値が200㎎/dL未満の成人、B:健常成人(空腹時血糖値126㎎/dL未満)、C:健常あるいは便秘傾向の成人】
③背景:
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、生活習慣病の患者数が増加している。水溶性食物繊維である難デキには、上記3つの作用があり、健康の維持・増進が期待できることから、システマティックレビュー(以下、「SR」と記載)を実施した。
<A:食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用>
④-A 研究レビュー対象とした研究の特性:
SRの対象者として、以下の適格基準と除外基準を設けた。
・年齢:20歳以上
・性別:問わない
・臨床試験の内容を十分に理解し、文書による同意を受けている者。
・空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人(空腹時血中中性脂肪値150mg/dL未満の健常成人および空腹時血中中性脂肪値150~199mg/dLの軽症者)
・疾病に罹患していない者
【除外基準】
・妊娠しているもしくは授乳中の女性。
・その他、データ公正を図るうえで、何らかの問題があると判断される者。
検索データベース:PubMed、Cochrane Library、医中誌Web、CiNii Articles
論文検索日:2015年6月25日(国内)、2015年6月25日(海外)
⑤-A 主な結果:
9報のランダム化比較試験(RCT)論文が抽出された。採用論文は全て日本国内で実施され、空腹時血中中性脂肪値200mg/dL未満の成人を対象とし、これは機能性表示食品を利用する集団と一致している。統計解析の結果、全ての評価項目において、対照群と比較して難デキ摂取群が食後血中中性脂肪値を有意に低下させることが確認された。また、原データを確認できる論文1報について健常成人(空腹時血中中性脂肪値150mg/dL未満)のみで再度追加的解析を行い、別途定性評価を行ったところ、本SRの結果に肯定的であり、科学的根拠があると判断した。本研究における難デキ(食物繊維として)の1回摂取量は、採用論文9報のうち1報が5.2g、7報が5 g、1報が9 gであった。ほとんどが5 gの論文であることから、推奨1回摂取量は5 gが妥当と考えられる。
⑥-A 科学的根拠の質
バイアスリスクは、ランダム化の方法についての記載のないこと、単盲検や脱落例があるために「-1」の評価となった。各アウトカムの総例数は、321~470例と例数が多く、不精確性はないと判断した。公表バイアスの存在は否定されなかったが、未公表論文を想定しても、公表バイアスの影響は小さいと判断した。メタアナリシスによる統合効果量は有意であった。
以上のことから、全てのアウトカムのエビデンスの強さはA(強い)と判断された。
<B:食後血糖値の上昇抑制作用>
④-B 研究レビュー対象とした研究の特性
SRの対象者として、以下の適格基準と除外基準を設けた。
・年齢:20歳以上
・性別:問わない
・臨床試験の内容を十分に理解し、文書による同意を受けている者。
・空腹時血糖値が126mg/dL未満の健常成人
・疾病に罹患していない者
【除外基準】 ④-Aと同様
検索データベース:④-Aと同様
論文検索日:2014年12月25日(国内)、2015年1月5日(海外)
⑤-B 主な結果:
43報のRCT論文が抽出された。採用論文は全て日本国内で実施され、空腹時血糖値が126mg/dL未満の健常成人を対象とし、これは機能性表示食品を利用する集団と一致している。統計解析の結果、全ての評価項目において、対照群と比較して難デキ摂取群が食後血糖値を有意に低下させることが確認された。本研究における難デキ(食物繊維として)の1回摂取量は4~16gであり、摂取量の中央値を算出したところ、5 gであった。摂取量による部分集団解析では、低用量群(5g/回以下の集団)においても全ての項目の統合効果量に有意差が認められたことから、食後血糖値の上昇抑制作用が期待できる推奨1回摂取目安量は、難デキ(食物繊維として)5gが適切と考えられる。なお、本SRの採用論文の中から正常域の者(空腹血糖値が110㎎/dL未満)を対象に実施された論文を調査した結果、該当論文が10報確認され、これらを対象に追加的解析を行ったところ、全ての評価項目でいずれも有意に低下しており、難デキの摂取による効果は正常域の者においても本SRと同様であった。
⑥-B 科学的根拠の質
バイアスリスクは、単盲検や脱落例があるために「-1」の評価となった。各アウトカムの総例数は、308~1094例と例数が多く、不精確性はないと判断した。公表バイアスの存在は否定されなかったが、未公表論文を想定しても、公表バイアスの影響は小さいと判断した。メタアナリシスによる統合効果量は有意であった。
以上のことから、全てのアウトカムのエビデンスの強さはA(強い)と判断された。
<C:整腸効果>
④-C 研究レビュー対象とした研究の特性
SRの対象者として、以下の適格基準と除外基準を設けた。
・年齢:20歳以上
・性別:問わない
・臨床試験の内容を十分に理解し、文書による同意を受けている者。
・疾病に罹患していない者であり、健常成人および便秘傾向者。なお、「疾病に罹患する」とは、医薬品を服用している者又は医療従事者等による食事指導若しくは運動指導等を受けている状態を指す。
【除外基準】 ④-Aと同様
検索データベース:④-Aと同様
論文検索日:2014年12月15日(国内)、2015年1月5日(海外)
⑤-C 主な結果:
26報(27研究)のRCT論文が抽出された。採用論文は全て日本国内で実施され、健常成人および便秘傾向の成人を対象とし、これは機能性表示食品を利用する集団と一致している。統計解析の結果、「排便回数」「排便量」において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群は有意な便通改善作用が認められた。本研究における難デキ(食物繊維として)1日摂取量は3.8~7.7 gであり、摂取量の中央値を算出したところ、5 gであった。摂取量による部分集団解析により、低用量群(5g/回以下の集団)においても全ての項目の統合効果量に有意差が認められたことから、整腸作用が期待できる1日あたりの推奨摂取目安量は、難デキ(食物繊維として)5 gが適切と考えられる。
⑥-C科学的根拠の質
バイアスリスクは、単盲検や脱落例があるために「-1」の評価となった。27研究の総例数は、1,104例と十分な例数であり、不精確性はないと判断した。公表バイアスの存在は否定されなかったが、未公表論文を想定しても、公表バイアスの影響は小さいと判断した。メタアナリシスによる統合効果量は有意であった。
以上のことから、全てのアウトカムのエビデンスの強さはA(強い)と判断された。 |