※以下、本欄では「難消化性デキストリン」を「難デキ」と省略します。
① 食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる事により、食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにすることが報告されている」点について
(ア)標題:
「健康な成人に対する、難デキの食後血中中性脂肪の上昇抑制作用」に関する研究レビュー
(イ)目的:
健康な成人や血中中性脂肪がやや高めの成人が難デキを摂取した場合に、摂取しない場合と比べて、食後血中中性脂肪の上昇が抑えられるかどうかを確認すること。
(ウ)背景:
難デキについては、これまでにも食後血中中性脂肪の上昇を抑える作用が報告されていました。また、同成分を関与成分にした特定保健用食品=トクホが「食後血中中性脂肪の上昇を抑えるのに役立つ」として複数許可され、販売されています。今回は、難デキを機能性表示食品の関与成分とするために、この「食後血中中性脂肪の上昇を抑える作用」について研究レビューを行いました。
(エ)レビュー対象とした研究の特性:
食後血中中性脂肪の上昇を抑える作用について研究報告している日本国内外の論文
を、結論が肯定的か否定的かを問わず全て検索、収集しました。そして収集した全ての論文内容を調査して、総合的に作用があると言えるかどうかを評価しました。検索日はPubMed、Cochrane Library、医中誌Web、CiNii Articles とも2015 年6 月25 日。検索対象期間に制限は設けず、検索日の時点で収集できた全ての論文を対象としました。各研究報告の対象集団は疾病に罹患していない者もしくは空腹時血中中性脂肪がやや高めの者。何らかの治療を受けている人、もしくは治療が必要とされる状態である人を対象にした研究は除外しました。各研究では難デキを含む食品と含まない食品を対象集団の各人にランダムに分配しており、分配された人は自分の食品が難デキを含むか否かわからない状態で摂取しています。最終的に評価した論文数は9 報でした。
なお、以上の研究レビューは㈱薬事法マーケティング事務所が、㈱松谷化学工業より依頼を受けて実施しました。実施にあたり必要な情報は、㈱松谷化学工業から提供されました。
(オ)主な結果:
レビューの結果、難デキの摂取は健康な成人において、食後血中中性脂肪の指標となる「食後2,3,4 時間の血中中性脂肪値」と「食後血中中性脂肪値の濃度曲線下面積」を、有意に下げることが確認されました。これにより、難デキを食事とあわせて摂取することによる食後血中中性脂肪の上昇抑制作用が期待できることが示されました。なお、空腹時血中中性脂肪値が 150 mg/dL 未満の方のみ対象とした論文の層別解析結果を評価したところ、健常な被験者においても有効であることが確認できました。
(カ)科学的根拠の質
研究の限界としては、本研究レビューの全ての解析対象論文の難デキは、本研究レビューの委託者が製造・販売する製品であったことから、利益相反の問題は完全には否定できないことが挙げられました。その他、被験者割り付けのランダム化の記述のない論文の存在、二重盲検法ではない試験の存在、試験期間中の脱落者の存在により中等度のバイアス(真の値との間に生じる偏り)はあるものと判断しました。公表バイアスについては、限られた論文数のため完全には否定することはできませんが、得られた結果に対して大きな影響は及ぼしていないことを確認いたしました。これらのことに加え、臨床上の疑問と各論文との間の各種条件の違い、結果のばらつき具合、あるいは被験者数が少ない等により効果推定量の信頼区間が広くなっていないかなどの観点を踏まえ、批判的に検討した結果、対象論文全体を通して十分に科学的根拠の質は確保されていると評価しました。
②「おなかの調子を整えることが報告されている」点について
(ア)標題:
「健康な成人に対する難デキの整腸作用」に関する研究レビュー
(イ)目的:
健康な成人や便秘気味の成人が難デキを摂取した場合に、摂取しない場合と比べて便通改善が見られるかどうかを確認すること。
(ウ)背景:
難デキについては、これまでにも整腸作用が報告されていました。また、同成分を関与成分にした特定保健用食品=トクホが「整腸作用に役立つ」として複数許可され、販売されています。今回は、難デキを機能性表示食品の関与成分とするために、この「整腸作用」について研究レビューを行いました。
(エ)レビュー対象とした研究の特性:
整腸作用について研究報告している日本国内外の論文を、結果が肯定的か否定的かを問わず全て検索、収集しました。そして収集した全ての論文内容を調査して、総合的に作用があると言えるかどうかを評価しました。検索日はPubMed 及びCochrane Library とも2015 年1 月5 日、医中誌Web 及びCiNii Articles とも2014 年12 月15 日。検索対象期間に制限は設けず、検索日の時点で収集できた全ての論文を対象としました。各研究報告の対象集団は疾病に罹患していない者であり、健常成人および便秘傾向者。何らかの治療を受けている人、もしくは治療が必要とされる状態である人を対象にした研究は除外しました。各研究では難デキを含む食品と含まない食品を対象集団の各人にランダムに分配しており、分配された人は自分の食品が難デキを含むか否かわからない状態で摂取しています。最終的に評価した論文数は26 報でした。
なお、以上の研究レビューは㈱薬事法マーケティング事務所が、㈱松谷化学工業より依頼を受けて実施しました。実施にあたり必要な情報は、㈱松谷化学工業から提供されました。
(オ)主な結果:
レビューの結果、難デキの摂取は健康な成人において「排便回数」と「排便量」を有意に増やすことが確認されました。これにより、難デキの摂取による整腸作用が期待できることが示されました。
(カ)科学的根拠の質:
研究の限界としては、本研究レビューの全ての解析対象論文の難デキは、本研究レビューの委託者が製造・販売する製品であったことから、利益相反の問題は完全には否定できないことが挙げられました。その他、二重盲検法ではない試験の存在、試験期間中の脱落者の存在により中等度のバイアス(真の値との間に生じる偏り)はあるものと判断しました。公表バイアスについては、限られた論文数のため完全には否定することはできませんが、得られた結果に対して大きな影響は及ぼしていないことを確認いたしました。これらのことに加え、臨床上の疑問と各論文との間の各種条件の違い、結果のばらつき具合、あるいは被験者数が少ない等により効果推定量の信頼区間が広くなっていないかなどの観点を踏まえ、批判的に検討した結果、対象論文全体を通して十分に科学的根拠の質は確保されていると評価しました。
(構造化抄録) |